01


一目惚れだとナンパの常套句の文句で、名前も知らない男にお持ち帰りされた。
目が覚めたとき知らない天井が広がっていた時は、もうね…。そして立ち上がろうとした瞬間に下半身に激痛。まじですか。しかも裸だし、下向いただけでびっしりとキスマークがついてるのがわかる。鏡見なくてもわかる量って、この人異常でしょ…。キスマつけるの好きな人なのかな…。
まあ、なにはともあれ、これでこの人との関係はおしまい。
あ、って声出したら、その声がかすれててびっくりした。おかげで叫び声があまり響かなくて済んでよかったけど。

「悪い大人だ…」

記憶は思い出してきてる。
昨日おれがどんだけ喘いだとか、あの人がどんなこと言って抱いたとか、思い出さなくてもいいとこまで鮮明に覚えてる。
隣ですーすーと寝息を立てて気持ち良く寝ているその人を起こさないように、痛む体を無理して這い出ると、そこらへんに脱ぎ捨てられていた服を着る。
携帯もリビングの机の上にご丁寧に置いてあった。見つけてそれを尻ポケットに入れる。時間を確認すると夕方だった。どんだけ熟睡してるの、おれ…。
バスはいつも定期で来てるから、財布は持ってきてない。
学生証が一緒に入ったパスケースも隣に置いてあった。これでバスに乗って帰れる。

「じゃあ、お邪魔しましたー…」

寝ているその人に別れの挨拶を投げかけると、そろそろと忍び足で玄関に向かう。
なんかこういうときって、相手を起こしたら面倒になるんでしょ。相崎が一夜限りの女と寝たとき、勝手に帰ろうとしたところを見つかって詰め寄られて、結局朝からもう1回ヤった。なんてまったく聞きたくもない情報を愚痴として聞かされた。

こんなときまで相崎のことを思い出すなんて。
ほんと、おれはどこまで侵略されてるんだろう。

「はあ…もうやだ…」

知らない人に抱かれて、何やってるんだろおれ。
もっと抵抗すればよかったとか、「たら」「れば」で物事を考えても、過去は変えられない。
それにおれが抱かれたとか、相崎には関係ないし、そんなこと。

「…うう」

考え始めると止まらない。
涙腺が最近弱くなったなおれ、知らない人の家でボロ泣きってほんと頭おかしいじゃん。
玄関に座り込んで靴を履こうとする。けれど、おれの靴がない。

「あれ……?」

俺が自分でカスタムした世界にただ一つだけのオリジナルシューズ…。
「裸足で来た…?んなばかな…」

ずびずび鼻をすすりながらノリツッコミ。なんか自分でもわけのわかんないテンションになってる。

「靴…」

帰れない、これじゃあ。
下駄箱を開けようと伸ばした手が、誰かに掴まれ、そのまま力強く引き寄せられる。
――――――デジャヴ。

「おはようハルくん。朝から泣いてるの?」
「うわあああ!!」
「うるさ」

隣で寝てたはずの男が、にっこりと満面の笑みでおれの動きを封じてた。


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