∴ 2/3 一回そう決意すると、そうすればぜんぶうまく行く気がした。 というか、信もそう望んでる気がする。 おれが中学卒業したときから付き合ってるから、もう2年? 最初のほうはちゅうもえっちもしてたけど、最近はぎゅーもしなくなった。別に欲求不満じゃないけど、それがさみしいなーと思うときもあるわけで。 金曜日の夜は、いつも信の部屋に泊まる。 隣だし泊まるっていうのも変だけど、もう習慣だしなー。恒例行事? 「あれ、今日パピーとマミーは?」 「あー。なんか明日同級生の結婚式らしくって、今日の夜から向かうって出てった」 「そーなんだー」 ふたりっきりかー。ちょっと緊張。 「なに緊張してんだ」 ふって信が笑う。 あ、今の顔、好き。 「ひー、なんか飲む?」 旭だから、ひー。 ちっちゃいころからの、信専用のおれの呼び名。 男前な信が、ひーってゆうの、好き。 「ココアー」 「相変わらず甘党」 待ってろ、って頭くしゃくしゃ撫でる。 ひさしぶりに感じる、信のぬくもり。 あーあ、なんか涙でそうだよ、おれ。 夏とか関係なしに、ココアと言ったらホット!なおれに、あっちーって文句いうけど、ぜったい作ってくれる。冬はマシュマロとか浮かせてくれて、それで上機嫌になるおれに単純だなーって呆れて。 やっぱり「あっちー」って言いながら、冷房ガンガン効かせた信の部屋に手作りココアを持ってきてくれる。 あー、もう、好きだなー。ぜんぶ、ぜんぶ。 「今日はゲームやんないの?」 「やんない。ひーがさみしそうに見るの、結構堪えた」 苦笑いでおれをぎゅーって抱きしめる。 おんなじ男なのに、なんでこんなに体格違うんだろ。いつも疑問に思ってた。おれも筋肉ほしい。 いつもはおれからぎゅーするのに、信からってちょーレア! あーあ、あーあ。 さみしーさみしー、だいすきだいすき。 この先どうなってるかわかんないから、ほんとは別れたいのになー。 だいすきだいすき。だいすき、だいすき。 別れたく、ないなあ。 全部がぜんぶ、惜しくなって、全部がぜんぶ、いとおしく感じる。 「恋人」だったら、ぎゅーもちゅーもその先もするけど、「近所のおにいちゃん」とはそんなこと、もうできなくなるもんね。 そう思ったら、尋常じゃないほどの涙が、どばーって出てきた。 もう涙腺決壊状態。信の着てる服びしょびしょになるほど泣いた。しかもしくしくとかじゃなくて、小っちゃい子供みたいに、わーんって。 「ちょ、ひー?!」 「うああああん別れたくないよおぉ」 「は?」 別れたくない、別れたくない。 延々とそれを繰り返すおれに、なにがなにかわからないって頭に?マークいっぱいの信。それでもおれの背中を撫でるやさしい手は止まんなくて。 泣きながらそれまでに至ったおれの考えを、たどたどしくも伝える。そしたらだんだん信の顔が不機嫌になってくのが、涙でぼやけた視界でも確認できました、まる。 |