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「えー、俺一人相手にすんのとか無理無理ー」

うわあ…。
全然悪びれもせずに言ったよこいつ。

「ヤリチン、滅びろ」
「えー?」

呪いの呪文を唱えて、おれは彼女の元に去って行った。
廊下を歩いているとき、小柄な男があいつのいる部屋に向かっているのを見たから、今日はあいつかー、となんともいえない気持ちを抱いて彼女の元に行った。
いちゃいちゃしてたら、そんなことは忘れたけど。



そこまで考えて、彼女を思い出してちょっぴりまたセンチメンタルな気分になってしまった。涙目だよおれ。
ごろり、仰向けになって雑誌を顔の上にのっける。はあーと大きくため息を吐くと、ぎしりとベッドが軋んだ音がした。

「…そーんなさみしいの?」
「あー?」

ベッドもなんか重みを受けて沈んだ気がする。
なにがどうなってんだと確認しようと、雑誌を取って視界を良好にしようとしたら。

「…なにこの体勢」
「押し倒しちゃったー☆」

なんだそれ!?!?!?
見事におれは、同室のあいつに押し倒されていた。
右を見ても、左を見ても、あいつの腕がおれを囲うようにおいてあるから逃げ出せない。
いつものようにタチの悪い冗談かと思い見上げると、幾分も目が真剣なあいつがいた。
思わず目を逸らすことが出来ず、じっと二人見つめ合う。
そしてそのままの体勢で

「なぁ、ヤろうぜ」

……はああああ!?!?!?
あまりの急展開についていけない頭。それに反比例するように近づいてくる顔。
うわああああ!?!??!
わけのわからないまま、とりあえずこいつを止めなければと足と手をばたばたとさせ、口で色々と意味不明なことを口走る。

「いやいやいやだめだろなんでおれになったんだよ!!お手軽すぎるだろ!!!」
「えー、だっておれ、ずっとお前見てたし、お前抱きたかったんだもん」
「いつからだてめえそれ!!!」

驚きのカミングアウトに真っ青なおれ。
じゃあおれは今まで、同室者にケツを狙われていたってことか…!?!?
うわああ無防備だった、盲点だった…!!

そんなとき、あいつが言っていた言葉を思い出す。
―――一人相手にすんのとか、無理ー。

これだ!!!
ひらめいたおれは、こいつの動きを止めようとさらに口走った。





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