∴ 1/3 彼女に振られた。 振られた日はめそめそ泣いた。2週間たった今も、思い出すと泣きはしないけど、何かこみ上げてきそうになる。 それを吐き気?とか言って馬鹿にしてきた同室者のあいつ、絶対に許さない。 だいたいあいつは下半身が緩すぎる。 リア充だったあのときは、彼女に会いに行くとかで部屋にいなかったときが多かったから、部屋に連れ込んで誰と何をやろーとおれには全く関係なかった。 だけど今は違う。 「おいお前、誰かとヤるときはこの部屋使うなよ」 「なんでだよ」 とりあえず話し合いをしようとあいつの部屋にノックをし、返事が聞こえる前に開けていく。「ちょっとーえっちー」なんておれよりも体格のいい男に言われたところで、なにもきゅんとしねえわ! そうしてまた勝手におれのお気に入りのあいつの部屋にあるビーズクッションに顔をうずめ、本題を切り出す。 いきなしのことにきょとんとしたあいつに補足する。けれども 「ここにおれがいるからだよ」 「は?いつもいねえじゃん」 「〜〜〜っ!!察しろや!!!」 あまりの無神経さと鈍感さに、現在進行形で傷心中のおれが思わず切れたら、ニヤニヤと意地悪な顔されたからからかわれたってことがわかった。まじぶちのめしてえ。 「じゃあ俺はどーすればいいのよ」 「あ?」 「我慢とかよくないだろ」 「知るかよ。そこらへんの草むらでしてこいよ」 めんどくさくなったから、おれはゴロリとあいつの部屋のベッドに勝手に寝転んであいつの雑誌を勝手に読み始めた。 アオカンかー、とか言い出したあいつ。あーあー、こういう男が日本を駄目にすんだよ全く。 そういえば、と過去におれが彼女いたとき、つまりおれが幸せの絶頂期のとき。 ニヤニヤと締まりのない顔で、おれがあいつに聞いたことがあった。 「お前彼女とかつくんねえの?」 今思えば、この質問ってむかつくね。 今おれがそういわれたら、確実にぶんなぐる。 でもそのときのおれは気づかない。なぜなら幸せだったから。 仕方ねえんだ、のろけたい時期だったんだよ。全寮制の男子校なんて入った時点で、おれの青春は終わりだと思っていたからな。 そう聞くと、小首をかしげてはてなマークを飛ばすあいつ。 その拍子にゆるくパーマのかかった茶髪の髪がさらりと揺れた。なんだその可愛いしぐさ。お前がすんなし、と思ったことは今でも鮮明に覚えている。現におれはむかつく、と言って頭をはたいた覚えがある。 いてーと言いながらも笑ってたからよかったけども。 そうほのぼのとした空気がおれとあいつの間でしばらく漂う。 はっと我に返ったおれは、もう一度同じ質問を繰り返す。 まあ、あいつの口から出た理由は、全然可愛いもんじゃなかった。 空気がぶち壊しでしたね。 |