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あのあと思い切り寝過ごしたおれは、すずちゃんの部屋で目を覚ました。
ここどこ!?と飛び起きたとき、ラフな格好をしたすずちゃんがマグカップを持って、「起きたか?」って聞いてきたときは心臓が飛び跳ねた。

「あんまりにも気持ちよさそーに寝てたからなあ」

起こしても起きなかったんだぞ、お前。
そう笑い混じりに呆れたように言われたら、何も言えなかった。

「もーすずちゃんのばかぁー。すずちゃんの授業出たかったのにー」
「…」
「?すずちゃんー?」
「――あ、あぁ。じゃあ俺が今から教えてやるから」
「わーい。二人っきりの授業だー!」

にこにこ笑うおれとは対照的に、なんだかため息をついてるすずちゃん。ちょっとほっぺがいつもより赤い気がするー。

「どーしたの、すずちゃん?」
「…お前、天然小悪魔だな?」
「テンネンコアクマ?」

なんにも、と誤魔化すようにちゅうとおでこにキスされた。



「なにそれ!!!タロちゃん、里中くんはどうなったの!!」
「え、ええー?付き合ってるよー?」
「すずちゃんとはどーなってるの!?」
「えっ、えっ?」
「無自覚デレktkr!!!!」
「え、え、委員長〜?」

きゃあきゃあ騒いでるチワワや、うおおおと興奮している体育会系やさわやかくん。
委員長なんか地球語じゃない言葉でなんかゆってる…こわいよぉ…。

「タロちゃん、里中くんはどんな反応してるの?」
「さ、サト…?」

そういえば、昨日あのまますずちゃんの部屋にお泊りしちゃったから、連絡してないやー。
まあサトも誰かの部屋に行ってえっちしてるってこともあるし、おれが一日くらい部屋に帰らなかったことでなにも支障はないでしょー。

「え、昨日お泊りしたの?!」
「うんー」

多分このさわやかな返事だと、セックスはしてないから大丈夫だね。
うん、そうだね。
チワワたちの声が急にちっちゃくなって聞こえなくなっちゃったー。

「次移動だからはやく行かなきゃー」

いつもなら委員長が言うセリフなのに、今日の委員長はどーしちゃったんだろぉ。
かわりにおれが言ったんだー。
廊下に出てだらだらと歩いていると、クラスメイトの一人のチワワがおれに質問した。

「タロくん、すずちゃんうまかった?」
「?」
「だから、あれだよあれ」
「あれかー!うん、上手だったよー」

すごいよかったー。
おれだってもう一応経験してるから、チワワが何を言いたいかわかってる。
だから一度こうやって言って、あとから「勉強教えてもらっただけだよー、なに勘違いしてるの、チワワのえっち」なんて言おうと思ってたのに。
おれってほんと、タイミングが悪いみたい。
真っ青になったチワワに気づかず、そのまま肯定して。
後ろにいた人物には気づかずに。

「―――タロ、」

サトがそこにいて、しかもそれを聞いて誤解するなんて、思わないじゃん!!
種明かしをしても真っ青になって泣くチワワに不審に思って聞いたら、サトがいたってカミングアウトされて。
おれが泣きたいよぉー。


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