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「タロー」
「なぁにすずちゃん」

すずちゃんと不思議な浮気関係が始まって2週間。
最初はなにするんだろとか不思議に思ってたけど、そんな特に気にすることもなかった。普通に授業受けて、ご飯を一緒に食べるだけ。
唇にちゅうはあのとき一番最初にしただけ。でも、ほっぺにちゅうとかおでこにちゅうとかはよくされる。そのたびに委員長が鼻血出したりとか、チワワちゃんや体育会系の子たちも発狂したりするのー。おれよりも驚いてるってどーゆーこと。

サトは相変わらず誰かとえっちしてるみたいだけど、もぉ知らなーい。
すずちゃんと浮気するようになってから、サトといるよりも一緒にいることが長くなって、前よりも笑顔が増えてきたような気がする。
またあのときみたいにサトが誰かとちゅーしてても、今なら大丈夫な気がする。
浮気が本気になりそーで怖いよー。

「寝るか?」
「うんー」

中庭でお昼ご飯を食べた後、お腹がいっぱいで眠たくなって目をこしこししてたら、すずちゃんがん、と手を広げてくれた。
そこにぽすんと体をすべり込ませて、すずちゃんの胸元にもたれかかる。
ぎゅうとあたたかいぬくもりにくるまれて、すずちゃんの匂いに包まれると、それだけで幸せになる。

「すずちゃんー…」
「ん?」
「もっとぎゅーってしてー」

その方が、心地いいから。

「……わかった」

ふっ、てすずちゃんが優しく笑う気配がして、そのあとぎゅうって力を込めて抱きしめてくれたから。
おれもにんまりと笑って、そのまま心地よい微睡に飲み込まれていった。




「里中くん、どうしたの?」
「――――…んだ、あれ」


中庭の一角が見える空き教室からサトが、自分の上に乗って腰を振っていた男の子を引きずりおろし、親の仇を見るようにすずちゃんを見ていたことを、おれは知らない。



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