∴ 1/3 「タロー」 「なぁにすずちゃん」 すずちゃんと不思議な浮気関係が始まって2週間。 最初はなにするんだろとか不思議に思ってたけど、そんな特に気にすることもなかった。普通に授業受けて、ご飯を一緒に食べるだけ。 唇にちゅうはあのとき一番最初にしただけ。でも、ほっぺにちゅうとかおでこにちゅうとかはよくされる。そのたびに委員長が鼻血出したりとか、チワワちゃんや体育会系の子たちも発狂したりするのー。おれよりも驚いてるってどーゆーこと。 サトは相変わらず誰かとえっちしてるみたいだけど、もぉ知らなーい。 すずちゃんと浮気するようになってから、サトといるよりも一緒にいることが長くなって、前よりも笑顔が増えてきたような気がする。 またあのときみたいにサトが誰かとちゅーしてても、今なら大丈夫な気がする。 浮気が本気になりそーで怖いよー。 「寝るか?」 「うんー」 中庭でお昼ご飯を食べた後、お腹がいっぱいで眠たくなって目をこしこししてたら、すずちゃんがん、と手を広げてくれた。 そこにぽすんと体をすべり込ませて、すずちゃんの胸元にもたれかかる。 ぎゅうとあたたかいぬくもりにくるまれて、すずちゃんの匂いに包まれると、それだけで幸せになる。 「すずちゃんー…」 「ん?」 「もっとぎゅーってしてー」 その方が、心地いいから。 「……わかった」 ふっ、てすずちゃんが優しく笑う気配がして、そのあとぎゅうって力を込めて抱きしめてくれたから。 おれもにんまりと笑って、そのまま心地よい微睡に飲み込まれていった。 「里中くん、どうしたの?」 「――――…んだ、あれ」 中庭の一角が見える空き教室からサトが、自分の上に乗って腰を振っていた男の子を引きずりおろし、親の仇を見るようにすずちゃんを見ていたことを、おれは知らない。 |