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「空気読めよ藤」
「あー?じゃあお前こそ空気読んで帰れよ」

茅の部屋で険悪な雰囲気を醸し出す二人。
それよりも茅は、なんでここに二人がいるの、という当然の疑問をいつ口に出そうか迷っていた。

「あの、どうしてお二人は…」
「あ?んなのお前が風邪ひいて休みだって言ったからだろ」
「…風邪の割にはお前平気そうだなァ」

ぎくり、と藤の質問にあからさまに動揺する茅。
その様子に新しくいたずらを思いついたように楽しく口元を弧にゆがめ、

「ずる休みかァ?茅」
「ぅ、や、違いま…」
「嘘はいけねえなァ」
「…ぅ」

ぐ、とこう断言されてしまえば、反論もできない。

「あーぁ、ずる休みとかする奴は、直々に俺が躾けてやるよ」

ちなみにそんな制度は風紀委員にはない。
にやりと笑い近づいてくる藤に、もはや反射的に涙目な茅。

「ち、違います、ずる休みじゃ…」
「じゃあなんで休んだんだ?」

いつの間に後ろに回ったのか、ベッドに座り込んだ茅の背中からお腹に腕を回し、後ろからハグをする志摩。
前からは楽しそうに笑いながら、舌舐めずりをしてこちらに近づく藤。
茅は絶対絶命だった。

「俺とのキスも避けるしなあ」
「それはお前としたくねえからに決まってんだろ」

は、と志摩の言葉を一蹴すると、そのまま顎を持ち上げる藤。
それにイヤイヤと本気の抵抗をする茅。

「ざまあみろ」
「…おい、茅」

キスを拒否されたことにより、藤の機嫌は見るからに下降していった。
それなら無理やりにでも、と噛みつくようにキスをしようとした藤に、我慢できずに茅が叫んだ。

「こ、口内炎だから、だめぇっ!!」

真っ赤になって、とうとうぼろぼろと涙を零す茅。

「「…口内炎?」」

思ってもいなかった理由に、めずらしく動きを止める二人。
恥ずかしさに消えてしまいそうになりながら茅は俯いて話を続ける。

「く、口に、口内炎ができて…」
「…だからキス拒んだのか」
「ふぅん…」

ご飯さえ食べれないのに、キスなんてできるはずもない。
というかどうして二人とキスをすることが自然の流れになっているのか。

「というか、僕、どうして二人とちゅうすることに…」
「「したいから」」
「ふ、ふぇ…っ」

あまりにも理不尽なのにきっぱりと言い切られ、どうしていいかわからない茅はとりあえず泣いた。

「泣くな茅」
「あ?泣かせとけよ」
「…な、今日はゆっくり休めよ」

藤の戯言をあっさりと無視した志摩は、慰めるように茅の頭をぽむぽむと撫でる。

「か、いちょ…」
「な。キスは口内炎が終わってからでいいからな?」

その言葉に、茅の言葉は何も伝わってないんだとぴしりと固まった。

「あーもったいねえ」

べろり、と茅の頬を流れる涙を舐めとる藤。

「しょっぺえ、けど甘ェ」

次は別のも味あわせろよ?とこちらも全く茅の意図を理解しておらず。

「え、えぐ…っ」

味方のいない空間で、茅は口内炎の痛みとは違う涙を流すのだった。



キスは執行猶予付き!


(決戦は1週間後)



口内炎なったことないんで、痛みわからないんですけど。
知恵袋とかwikiで調べました…。



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