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そんなやり取りが恒例化してきたとき。
泣いたり照れたりとあたふたしながらも、きちんと生徒会室に来ていた茅が初めて欠席した。
担任に連絡を取れば、どうやら茅は風邪を引いて休んだらしい。
大丈夫かなー、ねー。こくん。
双子と書記が心配する中、いつもより数十倍の集中力でたまっていた仕事を終わらせた志摩は、驚く3人を後目に早々と生徒会室を出て行った。机の横に置いてあった、風邪に効くと謳ってある薬を大量に購入し、また、ゼリーやジュースなど固形ではないのどに通りやすい食べ物が入った袋をひっさげて。

「…茅ちゃんとこ行ったね、虎ちゃん」
「ばればれだよね、虎ちゃん」

ガサガサと大きな音を立ててせわしく出て行った志摩の後ろ姿を見つめ、今日はうちのボスになにかいいことがあるといいなーと心の中でちょっぴり願いながら双子が苦笑いして言うと、書記がぽつりと衝撃的事実をパソコンに向かいながら口にした。

「…茅、風邪ひいてない」
「「え」」


生徒会室での会話などは露知らず、真っ直ぐ茅の元に来た志摩は、一応の礼儀としてチャイムを鳴らす。が、出ない。
廊下で待ちぼうけをするつもりは最初から全く考えていない志摩は、会長職が代々与えられるマスターキーを使い、いわゆる不法侵入をし、中に入った。
しっかりと自分以外は来ないように内側から鍵を閉めて。

「茅?」

呼んでも返事をしない。
奥にある寝室に足を進めると、すすり泣く声が聞こえた。
―――茅が悲しんでいる。
そう思うといてもたってもいられず、ノックもせずに寝室のドアを開けた。

「茅っ!!」
「っか、かいちょ…!?」

涙で濡れた目を丸くし、どうして会長がここにいるのかと分からない茅の混乱を解消するような説明をすべて省き、志摩は茅に手を伸ばす。
頬に触ろうとしたとき、それに気づいた茅がここ最近で一番の抵抗を示した。

「茅…?」
「や、だめです、触っちゃ…だめ…」

俯く茅に、それは意地でも触ってやろうと藤並みの意地悪さを発揮する志摩。
抵抗をものともせずに腰を引き寄せると、

「手で触らなければいいんだろ?」

屁理屈を言うと、唇を茅の元に寄せ、触れようとしたとき。

「離れろや、志摩」

―――そういえば、こいつもマスターキー持ってんだった。
ちっ、と舌打ちをし、ドアを開けて侵入してきた邪魔者、藤を見やった。

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