∴ 2/4 「おら、邪魔すんぞ」 ばん、と乱暴に開けられたドアにびくりと茅が震えたのに気付いた志摩は、その音を立てた張本人に向かって乱暴にドアから一番遠い位置にある会長のデスクから文句を飛ばす。 「おい、藤。お前茅びびらしてんじゃねえよ」 「あー?んなもんでびびんなよ、――あー、食いてえなァ」 ニタリ、と詫びることなく書類片手に中に入ってきたのは、風紀委員長である龍獄院藤(りゅうごくいん・ふじ)である。 元から悪い目つきをさらに細め、獲物を狙うかのように茅を見つめる。 茅はもともと藤のことが苦手だった。 まだ志摩は、俺様だけどフェミニストというか、好きな子はどろどろに愛するという嗜好なのに対し、藤は好きな子の泣き顔が見たいという典型的ないじめっ子タイプなため、茅はいろいろな理不尽なことをされ泣かされてきた。 壇上で泣く前から、茅に対して藤はたびたび嫌がらせというものをしてきたため、刷り込まれた苦手意識はそう簡単に覆ることはない。 無意識のうちに志摩の方に目線を向けていた茅は、それに気づいた藤が不機嫌そうに近づいてきたことに気づかなかった。 「茅ァ、俺が来てんのに何志摩の方なんか見てんだ」 「ひゃっ」 ぐいと首根っこを掴まれ、デコピンをされる。 喧嘩も強くて力加減の分からない藤にされるデコピンが茅は大嫌いだった。 ただでさえ近づくだけで泣くのを我慢しているのに、それだけでぶわあっと泣きたくないのに涙が出てしまう。 「っえぐ」 「あー…可愛いなァほんとオメェは…」 目尻を真っ赤に染めて興奮したように見つめる藤の目線から逃げようとする茅。 「「もう!何しに来たの龍ちゃんは!!」」 「…茅、泣かせるなら、帰る…」 成り行きを見守っていた双子と書記も、これには我慢できないと席から立ち上がる。ぽかぽかと藤に攻撃をし始める双子。伸びた手をぱちんと弾きまたもや茅を高い高いするように持ち上げる書記。 「ウゼェなオメェら」 「ふん!僕らは茅ちゃんのナイトだから!」 「そうだもん!」 「茅、守る…」 それに恥ずかしそうにもだえる茅が可愛いから、志摩は特にそのやりとりを止めることなく、茅をじっくりと視姦していた。 「ベッドん中でも泣かせてえな」 「ベッドん中でも悶えさせてえ」 図らずも同じ内容の言葉を口に出した、変態二人だった。 |