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隙あらばセクハラをしてくる会長、天虎志摩(あまとら・しま)と泣き顔フェチな肉食獣の風紀委員長、龍獄院藤(りゅうごくいん・ふじ)は、整った顔とカリスマ性で、学園を二分するほどの人気者である。
そんな二人が今現在、とても夢中な人。
それが副会長の御堂茅(みどう・かや)である。

先月長老という茅が大好きなおじいちゃん先生が定年退職したときに、壇上で見せた泣き顔と笑顔に学園中のタチ、ネコ、はたまた教師までを魅了し、今一番学園内で人気の人物である。

「茅。書類まとめてくれて助かった」
「あ、そ、んな…」

志摩がにこりと褒めれば、真っ赤になって俯く素直な性格。
思わずムラッと来た志摩は右手を伸ばし茅の手を引くと、自分の膝の上に乗せる。
見た目と違わずか細い茅の体は、本当に高校男子かと思うくらい軽かった。

「っひゃ…!」
「お礼はキスでいいか?」
「ぇ、や…っ」

自然な動作で茅の顎を掬うと、そのまま唇を近づけようと距離を縮める。
何が何だかわからないとパニック状態になった茅は、潤んだ眼と真っ赤な顔で抵抗するのも忘れ固まってしまう。

「「だめー!!」」

生徒会室で公然とセクハラをしようとした志摩を止めるのは、同じ生徒会役員の双子と書記である。
二人声をそろえて双子が制止すると、横からひょい、と大きな手で茅を膝の上からかっさらう書記。

「…会長、変態…」

ぼそりと区切り区切り書記が呟いた声は、誰よりも辛辣だった。


「もーなんで虎ちゃんはそーやってセクハラばっかするのー」
「茅ちゃん嫌がってるじゃんー」

ぶうぶうと可愛い顔を膨らまし、ずいぶん可愛らしいあだ名で志摩を呼び文句を言う。それにふん、といつものように俺様な態度を崩さず、

「可愛いもんは愛でなきゃだろ」

そう言って書記に抱きかかえられる茅に手を伸ばすが、その手はぴしゃりと書記にはねのけられた。

「…虎、茅泣かせる、駄目」

ゆっくりとした口調ながらも志摩の要求を拒否すると、その様子を見て志摩は器用に片眉を上げた。

「番犬みたいだな」

番犬?と言われたことに対してうまく反応しない書記に、茅がこっそりと「強いわんこのことですよ」と囁くと、「わんこ…」と動物好きな書記はゆっくり嬉しそうに反芻した。

「…あー、なんでお前そんな可愛いんだ」
「え?」

茅の「わんこ」発言にひそかにもだえた志摩だった。



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