∴ あいのくさり
(ヤンデレチャラ男の勝利)

もう浮気しないって、ゆったのに。

「―――――ちがっ!」

言い訳は、見苦しいよ。
彼が下半身丸出しでうろたえる姿も、涙で滲んで見えない。
男なんだから、恋愛ごとで泣くなんてみっともないって思ってたけど、今は泣いてもいいと思う。

「ほらね、やっぱり浮気してたでショ?」
「―――お前っ!」

まばゆい金髪のチャラチャラした間延びしたしゃべり方が特徴のアイツが、いつものように腰パンにチュッパチャップスを舐めて人を見下したような冷たい目線で、ひょこっと現れた。思いがけないヤツの登場に焦っている彼。
ただのチャラ男に見えるけど、一番怒らせたり敵に回らせたらヤバイって学園でも有名なほどの、危険人物のコイツに何をされるのか身構えてる。
知り合いか?と彼がうかがう目線も、逸らした。ただひたすら俯いて泣いている俺。

「だぁかぁらぁ、やっぱりオレしかだめだってぇ」
「…やだ、っ」
「拒否権はなぁし。だって賭けは賭けデショ」
「…賭け?」

一人会話に着いていけない彼が狼狽えている。俺はそれにかまうこともできず泣くばかり。
あのとき酔っていたからって、馬鹿な賭けに乗るんじゃなかった。その時の自分を何回呪っただろうか。

「浮気クンがぁ、1週間以内にまた浮気したら、オレと付き合うって賭けしてたのぉ」
「―――は、?」
「結果は見事、オレの勝ちぃー。浮気クン、今までご苦労さまぁ」

ヘラヘラと最後通牒を突きつける。

「バイバーイ」

そう言って、一瞬で拳を振り上げ彼を殴り飛ばす。
あまりの威力とスピードにまったく太刀打ちできなかった彼は気絶した。
それに満足げに笑うと、食べ終わって棒だけになったチュッパの残骸を彼の倒れた方向に投げ捨てる。

「さぁて、今日から一生よろしくね」

ああ、もう。捕まってしまった。
自分の未来は、もはやこの男のもの。
逃げることもできない、雁字搦めの愛の鎖で、俺は一生こいつに愛され続けるのだろう。




「あー、あの男のタイプな奴近づけて正解だったな。すぐ喰っちゃうとかまじウケるし」




end


ヤンデレチャラ男とかもう好きすぎて空も飛べるレベル。

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