∴ 01

今日は朝から災難だった。
朝起きてベットから立ち上がった瞬間、思い切り眼鏡を踏んづけて壊してしまった。
眼鏡なしじゃ正直黒板なんて見えないから授業なんて受けようもないけれど、起きてしまったからには行こうと、いつもより倍の時間かかって制服を着た。
朝のラッシュ時は人の波が怖くて行けなかったので、2時間目の空いた時間にゆっくりと地下鉄に乗り学校に向かった。
コンタクトなんて異物を目の中に入れるなんて怖くてできないし、視界がぼやけているせいか被害妄想かもしれないけれど、いつもより人の目がこっちに向いている気がするし。なんかいつもよりざわざわしてるし。

「なんなんだー…」

もはやわけがわからない。
教室の扉を開けて中に入る。目の前でたむろしていた集団にとりあえず挨拶をする。

「おはよー」
「お、おは…うおおお!?」
「へ…?」

人の顔見て叫ばないでよ。
その声を皮切りに次々とクラスメイトたちが僕を見てびっくりしてる。え?

「え、おま、永久(とわ)?」
「うん。え、分かんない?」
「眼鏡は?」
「今日朝起きたら割っちゃったから裸眼だよー」

そうやって説明しても、みんな納得してない様子。
どこからか、うそだろ、とかまじかよ、なんて声も聞こえる。え、もしかしてみんな、僕のこと眼鏡だけで判断してた?
そう思ってしまうのは仕方ない。それから授業に来るたび先生が僕のことを二度見したり、昼休みや帰りは廊下がなんだか騒がしかった。
だいぶ落ち込む。早く眼鏡買いに行こう…。



放課後、学校が終わったらダッシュで眼鏡を買いにショッピングモールに駆け込む。

「この眼鏡はテンプル部分に可愛くワンポイントが入っててー珍しい宝石が埋め…」
「これにします!!」
「そ、そうですか」

店員さんの話はそこそこに、直感で手に取った眼鏡を購入する。
早速つけると、今までぼやけていた世界がクリアになって、ようやく安心する。
鏡でその眼鏡を付けた自分を見ていると、きらり、とテンプルが光り、まばゆい光に包まれた。

「え―――…っ!?!?」


目もあけていられないほどの光が体を覆い、思わずぎゅっと両目をつぶる。
ようやく収まったと目を開いたとき、

――――全く見知らぬ世界に、僕はいた。


目の前に広がる草原。今僕がいた場所とは全く違う、緑に薫る世界。
え、え、え。ここ、どこ。え、え。
意味が分からない、え?

「へ、?あ、ぅ、え…?」

人間驚きすぎると、何も言えなくなるのは本当らしい。
ばたん、とキャパオーバーになった思考回路が停止し、僕はそのまま気絶してしまった。

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