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目が覚めると、体が縮んでいた、とかではなく。
あいつの顔がドアップで目の前に広がっていた。めちゃくちゃびびった。
人間驚きすぎると声が出なくなるんだということを実感しながら顔を見上げると、ほっとしたようにあいつが離れていった。

「よかった、急に吐いて倒れたから…」
「あー……そーだった…」

服にもとびちったのか、オレにしてはサイズのでかい見知らぬ服が着せてあった。

「あ、昨日の女は?」
「帰らせたよ」

しれっと言うなあこいつ、いつか刺されてもしらね。

「それよりどうしたの?うなされてたし、泣いてたよ…」

そりゃ肥溜めに落ちたからね。
夢の中でも匂いに苦しんでたからね。

「やっぱり、僕が女抱いてて何か思ったの…?」

心配そうに、でもにこにことしながら笑いかけてくる。なんだその両極端な感情は。こいつ器用だな。

「いやだった…?」
「……ああ」

思い出すだけで、また吐きそうだし、泣きそうだ。
正直に言ったら、やっぱりうれしそうに笑った。

「やっと気づいたの?」
「はあ…?」
「ねえ、言いたいことあるなら言ってよ。君の言うこと次第ではそれをやめるから!」

きらきらとした目で見てくるから、疑問に思いつつもオレの気持ちを言ってみた。

「……もう、ああいう風に女抱くなよ……」
「……!!!」

あのときの匂いを思い出しただけで潤む目。
涙目になって滲んだ視界で、胃からこみ上げる酸味を思い出しまた涙が出る。
だんだんとあいつがベッドに乗り上げるのを不思議に思いながら、言いたいことを言おうと言葉を続ける。

「リビングで、見せつけるように抱くのもやだし(見たくないのに)、喘ぎ声も響かせないで(うるさいし)……それに」
「それに?」

あれれ、オレ押し倒されてね?

「女の匂いが染みついてるお前なんか、きらいだ」

くさいから。

なのに、あいつはオレにだんだん顔を近づけて、まるでキスしようとするかのように距離を縮めてくるから。
大きく息をすって、そしたら思い切り香水の匂いが鼻に飛び込んでくる。




「う、うおえええええ」
「うわああ!!!」



だから思いっきり吐いてやった。


おわり
汚くてびっくり。
勘違いしちゃったんだ、彼は。

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