∴ 1/2 今日も隣の部屋から喘ぎ声が聞こえる。 顔がよくて女にモテモテなあいつと一緒に暮らしている、オレ。 高校のとき意気投合して仲良くなって、それから一緒の大学に進むってことを知って、金を浮かせるためにルームシェアをするようになって、半年。 あいつの女癖の悪さは半端がない。 いやあ、神は二物を与えずっていう言葉を昔は信じていなかったけど、今はわかるね。 やっべーなんか欠点作っとくか?じゃあどうしようもない女好きで性病持ってそうってやっかまれるようにしとくわ、おk、みたいな会話が上で成り立ってこいつが生まれたんだと思う。 …んな馬鹿な。 とりあえず深夜のバイトがやっと終わって疲れてんのに、聞きたくもない喘ぎ声を聞かされて、ちょっと現実逃避しちゃってたわ、てへぺろ。 とまあどうしようかと思ってたのは多分8秒くらいで、とりあえずシャワーも浴びずに寝た。夢も見ないほど爆睡したわ。あれ、夢みたらいいんだっけ? 翌朝、と言っても昼過ぎ、起きたら女はいなかった。 残ったのは、むせ返るほど濃い香水の匂い。 (く、くせえええええええ!!!!) ほんとまじなんであいつの選ぶ女って香水くさい女ばっかなの?シャンプーの匂いとか漂わせてる、そんな清楚な彼女募集中なう。 オレの歴代彼女はたとえギャル系でも香水なんかプンプンさせてなかった。それに抱くときまで香水くさいやつとかいなかったし。みんなシャワー浴びていい香りの女の子たちばっかだったし。 今日は居酒屋のバイトだった。 酔っぱらいに絡まれて、飲まされて。働いてんのに酒飲んじまったよ、オレ弱いのに。 案の定べろんべろんに酔っぱらって店長に無理やり帰らされた。そりゃそうか。 ふらふらで帰ってきたら、はい来ましたよまたまた喘ぎ声。 しかも今日はリビングでやってやがる。まじありえねえー。 早く自分の部屋で寝たいと思って一歩踏み出した瞬間。 ―――精液の匂いと、香水の匂いが絡み合った最悪の悪臭が漂ってきて。 「お、おえええええ」 「う、うわっ!!」 「きゃ、きゃああ!!!!」 オレはその場でぶちまけた。 その日見た夢は、肥溜めに落ちてもがき苦しむ夢だった。地獄だった。 |