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「……あのさ、出てってくんない?」

マナを抱きしめたまま、睨みつける。
何もかもが腹が立った。マナを殴った奴も、それを見て笑った奴も、仕事をしない奴も、マナを困らせている何もかもに。
悪玉菌が全部悪いわけではない。でも、マナを殴って、しかも泣かせるという、おれとあの人の中での最大のタブーを、こいつは犯した。
散々好き勝手して、マナが殴られたことに怒ってるこいつも、仕事を全部ほっぽり出して、しかもそれを処理してくれたマナが殴られたことに一切怒りもしないこいつも、誰だか分からない転校生の付き添いの一般生徒も。

「お前らさ、いらないんだよ。全部出てけよ」

ゆらり、と怒りで体が熱く燃え上がった気がした。
いつものしゃべり方と雰囲気が全然違ったおれにびっくりしてるのか、動かないそいつらに向かって怒鳴る。

「聞こえねえのか、出てけっつったんだよ!!!!」

それを聞いて最初に反応したのは、会長だった。

「何言ってんだてめえ、ここは…」
「生徒会室だけど?生徒会役員が仕事をする部屋だ」
「俺は生徒会長だ――」
「は?関係ないけど。最近あんたなんかやった?あんたはそこの転校生を追っかけまわして遊んでただけじゃん。マナに嫉妬してほしかったからかもしんないけど、昔からセフレとかと遊びまくっててもなんも言われなかったっつーことは、マナがあんたのことなんかなんとも思ってないって分かれよ」
「………っ」

おれの胸の中にいる想い人を会長は見るが、マナはおれの首に腕をまわし胸元に顔をうずめていたので、目が合うことはなかった。

「そ、そんな言い方ねえじゃ…」
「お前さ、なんの権利があってマナを殴るわけ?」
「え…?」

今度は悪玉菌が口を開いたが、それにおれも視線を返す。

「お前何勘違いしてんのか知らねえけど、マナとおれがこいつら生徒会役員が仕事をしなくなった分をやってたんだけど。そんで寝不足でふらふらなマナが倒れるといけないからって仮眠室で寝てただけなのにさあ。ガキみたいに勝手な妄想でマナ殴りやがって、死ねよ」

その言葉で泣きそうにゆがむ悪玉菌。
その姿を見て一般生徒二人が横に守るように立つ。

「てめえ、何 明泣かしてんだよ」
「…お前がそれを口にする?」
「はあ?」
「マナはこいつに理不尽に殴られて泣いてんだよ?何自分が正しいみたいに言っちゃってるわけ?つーかここ一般生徒禁止なんですけど。一匹狼だかなんだかしんねえけど、ようは友達いないだけの奴が調子乗ってんじゃねえよ」

その言葉に黙った。爽やかくんはその様子に、怒りを鎮めていた。こいつはこの中じゃよっぽどまともだな。冷静に状況判断ができる。

「んで、庶務と書記。あんたらはもう生徒会にはいりません。今までありがとーございました」
「――はあっ!?」
「――っ!!」
「マナには内緒にしてたけど、もう新しい役員は選出済みなんだよね。むかつくことに優秀な会長のかわりはいなかったけど、あんたらレベルならこの学園にはごろごろいるわけ」

これにはマナも顔を上げる。

「ちょっとテン、どういうこ…!」
「これは、おれだけじゃなく、あの人の決定だから」

それにはマナも押し黙る。
変色して青紫になった痛々しい頬。そこにはもう涙は伝ってなくて安心する。

「マナ、保健室行こう?」

そうして呆然とする奴らを生徒会室に残したまま、マナをおぶって保健室に向かい、そのまま帰らなかった。



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