∴ 1/4 「ねー、マナぁ、いつまでおれたちって二人で仕事すんのぉ?」 「知りませんよそんなの!」 カリカリカリカリ。 終わらない書類といら立ち。 広い生徒会室には、マナこと副会長の眞鍋楓(まなべ・かえで)と会計のおれ、佐久間天(さくま・のぼる)しかいない。 「悪玉菌のとこでせいぜい繁殖してればいいんですよ」 「ぶっ、マナ、すごいそれ面白いよ!」 悪玉菌、と称されるつい最近転校してきた髪の毛がもじゃもじゃのギャグみたいな髪型の少年は、転校早々マナに「作り笑いが気持ち悪い」と法的措置をとってもいいような言葉で侮辱し、泣きながら帰ってきたマナを慰めていたら、なぜかマナを泣かせた奴に興味を持った会長や書記や庶務が顔を見たい、と食堂に向かい、見事恋に落ちたという。 「B級ロマンスにもほどがあるよねえ」 はあ、と終わらない書類を見てため息をつく。生徒会以外にも、一匹狼や爽やか、ホスト教師なんてものをたらしこんだらしく、親衛隊は大荒れである。 ちなみにおれも「セフレなんてやめろ!」なんてゆわれちゃった。「寂しいならオレが友達になってやるから!」って。溜まっていく性欲を解放するためのオトモダチなのに、しゃべってるだけすっきりするわけないじゃんねぇ。セフレって言っても、会長みたいに手荒な扱いはしてないからみーんな仲良しだし。 「マナぁ、休憩しよーよぉ」 「そんなことしたら終わりませんよ!」 「ぶーぶー」 マナは寝不足でクマが出来た顔で、必死にペンを動かしている。血色の悪いその顔はいつもの美しい顔とは程遠く、ちょっと怖い。親衛隊の人たちもマナが食事をとってない、って泣きながらおれに言ってきたし。それにあの人も、マナと会えないからって機嫌が悪い。 「ねぇーマナぁー」 「う……。わ、わかりましたよ。じゃあテンが先に休んでくだ…」 「マ・ナ・も」 「……はい」 おれの名前、天って書いてのぼるって読むから、音読みでマナは「テン」って呼んでる。マナだけが呼んでる、特別な名前。 ばふ、と一緒に生徒会の仮眠室でぐっすり眠った。 小さい頃からの癖で、一緒に寝るときマナはおれの腕に頭をのせて、丸くなって寝る。 よっぽど疲れていたのか、おやすみ3秒で眠りに落ちたマナの額にちゅうをすると、おれも眠ろうと目を閉じた。 この仮眠室は、防音で内側から鍵がかえるから、外から侵入されることはよっぽどじゃない限りない。だから会長とかはここにセフレを連れ込んでヤろうとしていたけど、仕事に集中できないから、とマナが禁止した。実はおれも連れ込もうとしていたけど、それを聞いてやめたのは内緒。 だから、ここはあの悪玉菌が絶対に入ってこれない、秘密の場所だった。 弱点は、外の様子がわからないということ。 久しぶりにぐっすりと寝て、すっきりした頭で起きたおれと、寝起きが悪いマナがのろのろと目をこすりながらおれの服のすそをつかみながら、仮眠室のドアを開けると、 「あっ!!お前ら、ふ、二人で何やってたんだよ!!」 悪玉菌と、そいつに恋したロクデナシ共がいた。 |