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目には目を、歯には歯を。
――――浮気には、浮気を。


最近目に見えて彼氏の浮気癖がやばい。
昨日なんか共有スペースでセックスしてた。同室がおれって知ってるのにねえ。せめて自分の部屋で営んでほしいよまったく。せっかく昨日は食堂はやめて部屋でご飯食べようと思ったのに、精液くっさい中で食べれなかったしぃ。
それに昨日はそれよりさらにショッキングな場面も見てしまったし、気分は最悪…。

「ということでぇ、かっわいそーなおれを慰めてくれるカワイコちゃんぼしゅ〜ちゅう〜」

朝のHR前の教室で、昨日の衝撃の事実をしゃべる、水澤邑太郎(みずさわ・ゆうたろう)16さい。
茶髪のゆるふわパーマにダボダボなセーターを着てゆるーくしゃべるのがおれの特徴。この口調は小さい頃からの癖。いっつも腰パンしたりしてるのは、真面目に制服着るのは顔に似合わないってよく言われるから。そのせいでチャラいとか言われるけど、見た目だけだからね全く。

「タロちゃん、また彼氏に浮気されたの?」
「だいじょうぶ?」
「タロちゃんはもっと里中くんに怒っていいと思う!」

チワワみたいに可愛い男の子たちがわらわらと心配そうに寄ってくる。まったく、こんなに可愛い子たちが集まってる親衛隊をないがしろにするなんて、サト(あ、彼氏のことね)まじわけわかめぇ。そのくせてきとーに食べてぽい、なんだから、都合良く扱いすぎでしょぉ。

「もうサトなんかしらなぁーい」

食べる?と小柄な男に差し出された大好物のイチゴポッキーを食べながら、椅子の上で体操座りでいじけ始める。ぽりぽりと口の中で小刻みに刻みながらちまちまと食べていると、いつものことかと傍観していたクラスの男子も心配そうに寄って来た。

「タロ、今日はなんかいつもより落ち込んでる?」
「前はサトの浮気なんかへのかっぱとかゆってたくせに」
「う〜ん…」

確かにゆったよぉ、うん…。

「昨日さぁ、はじめてサトがおれ以外のやつとちゅーしてる現場見ちゃったの」

「ちゅ、」
「ちゅう?」
「…って、キスのこと?」
「そぉ」

みんな目を丸くしてる。おんなじ顔しておもしろ〜。

「タロくん、里中くんがちゅうしてるの見てショックだったの?」
「うん〜」

可愛い子がちゅうって言うとめっちゃかわいい。「ふつう彼氏が誰かとヤってた方がいやじゃねえ?」
「んーん。タロくん的にはあー、えっちよりもちゅうのが、好きな人としかできない行為って感じがするから、そっちのがいやなんですぅ」
「なるほど…」
「セフレっているくらいだから、えっちは愛無しでもできるもんなのよ。でもぉ、ちゅうはさあー…ちがうじゃあーん…」

考えれば考えるほど落ち込むー。
どんより沈んでたら、みんながいろいろ慰めてくれた。ほんとやさしいクラス、だいすき。

「もー里中くんむかつくー」
「ちょっと顔がよくて頭良くて運動できるからってなあ」
「「「タロくん悲しませるのは許せないー!!」」」

クラスのみんなが声を合わせてゆってくれる。ちょっとほろりときちゃった。

「おー、お前ら席つけー」

じーん、とみんなのやさしさに感動していると、担任のすずちゃんが扉を開けてきだるそうに入ってきた。心配そうにこっちを見ながらしぶしぶみんな席につく。

「なに、またタロ関係か?」
「あのねすずちゃん。タロくん、昨日すっごいショックなことがあったから落ち込んでるのー」

チワワの一人がはーい、とちょこんと手をあげて発言する。
その子に続くようにわらわらとみんなが発言し出す。

「里中くんがちゅーしてたの、それがタロくんショックなんだって」
「腹立つよな、里中!」

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