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あいつと付き合った理由は、一言で言うと「ノリ」だ。いきなしチューされたと思ったら、なーんか告白されて、なーんか流されて、なーんか押し倒されて。そしたら次の朝から付き合ってた。一度肌を合わせたら情が移るっつーのはまじだ。男同士なんてぜってえ無理だと思ってたけど、アイツがなんも曇りのない眼で笑うから、おれもつられて笑っちまった。

なのに

「ん…あ…っ」

1ヶ月もたたないうちに、あいつの部屋から聞こえる女の喘ぎ声。その時は一瞬視界が真っ暗になった気がした。

「まじか」

今日おれがこの部屋に来たのは、あいつに呼ばれたから。
―――あいつは、おれが来るのを知っていて、ここで女を抱いている?
そう考えたらショックどころかだんだんと腹が立ってきて、だけどそんなことをする意味がわからなくて混乱した。

「…帰るか」

とりあえずここにいても何もすることがないので、今日あいつに返す予定だったゲームを部屋において、おれは他の奴と遊ぼうとアドレス帳を詮索しながら部屋を出た。
喘ぎ声は最後まで止まなかった。

それからおれと同じように暇を持て余していたダチ二人をつかまえ、いつものように馬鹿騒ぎをして笑っていた。いつの間にか日は暮れ、酒でも飲むかーとコンビニで大量に酒を購入し、おれの部屋で宅飲みをすることにした。

「おまえらさあ、もし浮気されたらどーするべ」
「あ?何お前、あいつとなんかあったん?」
「修羅場っすか、修羅場ぁ〜」

あいつに告白されたことはあいつとおれの共通の仲がいい奴らはみんな知っている。何せそいつらと居酒屋にいるとき、酔っ払ったあいつがおれにチューして告ってきたから。おれの発言に興味を持った奴らがにまにまとしまりない顔をして先を促してくる。

「今日部屋行ったら女抱いてた」
「「ぶっほ!!!」」

酔って饒舌になったおれがつい今日の出来事を口を滑らせて言うと、そいつらは飲んでた酒を噴き出した。

「きったねえなお前ら!!」「は、は、はああ!?!?」
「ま、ま、まじかぁ!?」
「ぶっ、おめーらどもりすぎだろぎゃははは!!!」

幸い宅飲みだったので客や店員に迷惑をかけることなく(強いて言うならおれの服にちょっとかかった)、濡れたテーブルや床を拭きながら騒ぐ。

「おめー、そりゃ浮気じゃねーか!!」
「あ〜ん?」
「付き合ってる奴が他の奴抱いてた、イコールう・わ・きぃいい!!」
「…まじでえ?」
「おーおーまじでえ」

思わず真顔になるおれ。

「…つかさあ、本来男は女抱くっつーのが普通じゃねえ?なのに浮気ってへんじゃね?」
「…どーゆーことよ」
「だからさあー、男同士に浮気もへったくれもねえんじゃねえべか?」

おれの持論を披露すると、最初は怪訝そうにしていた二人も理解したのか、にぱーっと酒で赤くなった顔に満面の笑みを浮かべて、ちがいねえべーと笑った。

「まあ飲みましょーや!」
「おうおう!どんどん開けたれ!」
「ちょ、それオレが買ったんですけどぉ!」

しゃべってるうちに話し始めた当初より酒がまわったおれらは、それからぐびぐびと浴びるように飲んだ。うるさすぎて隣人から壁を叩かれるほど騒ぎ、暴れ疲れたおれらはいつの間にか爆睡していた。



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