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ふかふかなシーツに力が入らず、上からのしかかってきた紫先輩に大した抵抗も出来ずそのまま激しく口づけされる。

「ん、っ!!」

唇全体を覆うように激しく奪われる。紫先輩の舌が入らないように必死に唇を閉じ続ける。呼吸を奪われ酸欠になる。とうとう限界がおとずれ、

「ん、ん…っ!!はな、ぁ…っ!」

離して、と文句を言おうと口を開くと、隙間から舌がぬるりと入って、歯列をなぞり、そのあと舌を絡められる。ちゅ、ぢゅう…と耳をふさぎたくなる水音が響く。
やっと解放された時、紫先輩の薄い唇が唾液でテラテラと光っていた。

「はあ…っ、はあ…っ」
「息切れするほどよかったか?」
「―――っ!!」

思わず紫先輩をにらみあげる。唾液でぬれた唇を拭いながら、

「なんなんですかっ、いきなり来て…っ!!」
「日生がぜーんぜんメールも電話もくれなくなって、驚かせようと思って高校に来たら、お前、俺と自然消滅したって言ってたらしいじゃねえか」
「…それは…」
「お前は知らねえ奴と良い雰囲気出してるし、そりゃこっちとしちゃ腹も立つわな?お前がいるからどれだけいろんな奴に迫られてもなびかなかったのによぉ…」
「え…っ!?」

どういうこと…?そう顔に出ていたのか、今度はうってかわって先輩は優しい顔をして僕の頬に手をすべらせながら、

「もう俺はお前しか抱けねえんだよ。どうしてもって迫ってきた女がいたからフェラだけはさせてやったけど、お前じゃねえって思ったら勃たなかった」

――――まさか、そんなことって…。

「嘘じゃねえよ?俺は大学行ってお前と別れてから、一切誰も抱いてねえ」

驚愕の事実と、僕の最悪の誤解に自然と涙があふれる。

「ご、ごめんなさ…せんぱ…。でも、僕、もう…」
「離さねえよ?」

泣きながら自分の今の気持ちを訴えようとすると、それを遮るように先輩が即答する。
その声の冷たさにまた涙があふれる。

「大学卒業するまでは自由にしてやろうと思ってたけど、やめた」
「…え?」
「たった3ヶ月離れただけで、すぐお前は男を誑かす。俺はお前が心配で仕方ねえよ」
「た、ぶらか…っ!」
「お前、そいつのとこ行こうとしてんだろ?」
「……はい…」

紫先輩が経験豊富だから、とか、嫌な自分を見たくないから、とか関係なく。僕は心優しくてあたたかい佑弥くんと存在が、す―――

「だからさ、もう日生を自由にしとくのはやめた」
「…え?」
「お前、俺の過去のこと気にしてんだろ?セフレのこととか、経験の差とかさ」
「…!?」
「過去は消せねえから仕方ねえよ。俺がどんだけお前と出会う前の俺を殺そうと思っても、それは俺にも出来ねえ。―――だからこれからは、お前に俺の未来をやるよ」
「…?ど、ういうこと、…?」
「キスもセックスも全部お前としかしねえ。これから先、俺に触れていいのはお前だけだ。もちろんお前に触れていいのも俺だけ」
「せんぱ、僕は、もう、紫先輩とは別れ…」
「―――なあ、日生」

びくっ、と肩がふるえる。

「―――あいつって、確かバスケ部なんだよなあ?」
「は、い…?」
「―――――バスケって、足、大事だよなあ?」

ぞくり、とした。
それは、れっきとした、脅迫―――ー…。

「なあ、日生――――?」

近づいてくる顔に、今度は抵抗できなかった。目を閉じた拍子に、涙がつう、と頬を滑りおちた。
――あの人の、笑顔が 浮かんだ。


おわり


紫先輩まさかのヤンデレ化。
彼の行動はひつには読めない。


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