∴ 2/5

先輩が大学に入って、僕は高校3年生になった。僕の予想通り、忙しさからかお互い連絡する機会は徐々に減っていった。狙うは自然消滅。対する僕も進路やらなんやらでめまぐるしい生活を送っていた。高校生活もあと1年だということで、周りは春から告白ラッシュだ。僕も先輩と付き合っているからか、付き合ってとは言われなかったが告白されることは多々あった。

そして6月。そろそろ自然消滅したころかな、とぱったりと鳴らなくなった先輩専用の着メロを思いながら、新しい恋でもしようか、それとも勉強に生きようかと考えていた。食堂に向かっている最中、3年間ずっと一緒のクラスで一番仲がいい友達の満(みち)が「そういえば」と僕の方をちらりと見て、

「ひなって先輩とどうなったの?」
「……いきなりだね満」
「気になったから。で?」
「んー…自然消滅、かな?」
「まじ?紫(しの)さんひなにベタ惚れだったじゃん」
「やっぱ高校とはいろいろ違うじゃん、しかも大学は共学だしね」
「あららー…ごめんねー」
二人とも日替わり定食を頼んで席に着く。うどんをちゅるちゅると食べながら、満は全く悪いとも思っていないおざなりな謝罪を僕にする。僕も大して気にすることもなくご飯をもくもくと食べていると、

「つ、塚原!!!」

僕の名字を大きな声で呼ぶ声が背で響いた。幸い食堂は変わらずがやがやしていたので大注目とはいかなかったが、何人かはちらちらと振り向いていた。

「なに……?」

振り向くと、3年生になって一緒のクラスになった男の子が立っていた。名前なんだっけ、と思いながら返事をすると、彼は真っ赤な顔で

「あのさ…っ盗み聞きするつもりはなかったんだけどっ、塚原が先輩と、自然消滅した、って聞こえたから…」
「それがなに?」

体格的には先輩のセフレというわけではなさそう。

「お、おれ、塚原のこと気になってて…、よかったら、友達からでもいいんで付き合ってくれませんかっ!!」

ばっ、と頭を下げて手を僕に向かって差し出してくる彼。これにはさすがに食堂中から視線が集まった。ひそひそ、と話す声も聞こえる。満に助けを求めようと目を合わせようとしたが、満はぐびぐびとうどんの汁を飲んでいて全くこっちを見ていない。

(満いいいい!!)
「あ、あの…だめかな…」
「っあ」
恥ずかしさからかプラス涙目になった彼に不覚にもきゅんときてしまった。――新しい恋を、この人とするのもいいかもしれない。

「友達からならね…いいよ」

ぎゅ、と手を握った。




彼は横沢佑弥(よこざわ・ゆうや)くんと言うらしかった。この学校にはバスケの特待生で来たそうで、高校に入って付き合った人はいたらしいが、あまり長く続かなかったらしい。

「おれバスケやってる方が好きなんだよね。あと友達とわいわいしてるのも好き」
「じゃあなんで僕と付き合いたいの?」
「えっ!や、あの、それはもちろん、好きだから、です…」
「あはははっ、顔真っ赤だよ佑弥くんっ」
「〜〜!!」

友達になってから、僕と佑弥くんと二人で過ごすことが多くなった。満は彼氏のところに行ったりここにいたりと気まぐれでいないから、今日も一緒にお昼を食べている。
――彼は、僕に合う人なのかもしれない。僕が変な嫉妬をしたりしなくてもいいし、きっと、この恋は上手くいきそうだ――

「――佑弥くん、あのさ、」

告白の返事をしよう。素敵な関係を築いている未来を思い描きながら僕は笑顔で彼に話しかけた、そのとき。



長らく聞くことがなかった、紫先輩専用の着信が鳴った。



( prev : top : next )

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -