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大学3年生って言うと、おれの中では就活って言葉しか思いつかない。12月解禁とかふざけんな。まあ4月からもいやだけど。ていうか文系あっぱらぱー大学の男なんて、理系になんて勝てるわけないだろ。もうやだー。スーツも着たくない。ネクタイ結べないから学ランが制服の高校に行ったって言うのに。

「あー女はいいよなあ。結婚したら育児休暇とかとれるしなあー。あーおれにも子宮が欲しい。クリスマスプレゼントには子宮をください神様」
「………なに言ってんだお前」

あまりにも悩みすぎてとうとう一人で抱えきれなくなって、そんなばかばかしい願いを口にする。一緒にご飯を食べていた友人の悠仁(ゆうじん)(ここ笑うとこね、ぷっ)にドン引きされた。

「なんだよ」
「お前こそなんだよ」

お互い睨み合いながら、おれはうどん、あいつはパスタをすする。

「パスタいいな、一口くれ」
「ん」

パスタを巻きつけてフォークを差し出す悠仁に、ぱかっと口を開ける。その途端またドン引きな顔。なんでだよ。

「男同士であーんはきついだろ…」
「だってめんどいし。くれ」

うげーと顔をしながらも差し出してくれる悠仁。ミートソース美味しい。まわりを気まずそうに見る悠仁に空気を読まずもう一言。

「そのナスもくれ」
「…はいはい」

諦めたようにあーんしてくれた。うんうん、これでいいじゃん。もぐもぐと食べながら、お礼を言ってまたうどんをすする。

「あ、悠仁おれのも食う?」
「…食うが俺は自分で食う」
「ほーい」

まああーんしてくれって言われたらおれだってドン引きするけど。
うどんの入った器を自分の元に寄せてすする悠仁をぼーっと見ていると、またあの悩み事が出てくる。

「あー働きたくない。神様おれを女にしてー」
「ぶっふぉおお」
「きたなっ。もう一回言うけどきたなっ!」

なんでかしらないけど悠仁がむせてうどんを吹き出した。うげー。なんかあとで奢ってもらおう。

「なに、水いる?水。はい」

ぶんぶんとうなずいてるので飲んでいた水を渡す。ごくごくと一気飲みして、そのまま勢いよくコップを叩きつけた。

「っおまえは、ほんっっと何言ってんだ……」
「えー?だって女になったら働かなくていいじゃん。おれはそれくらい就活に鬱なんだよ」
「いや、まだ始まって1ヶ月も経ってないだろ…」
「でももうつらい。おれ無理。学校ならぜってえ単位もらえるからいいけど、就活は終わりが見えない。やだ」

ぶうぶうぶうたれるおれに呆れた目を向ける悠仁。

「お前はさあ、ほんと甘ちゃんだなあ」
「じぇじぇじぇ?」
「ちげえよ。甘ったれてるってことだっつーの!お前よりユリナの方がしっかりしてる」
「は!?ユリナちゃんってお前の妹だろ!それよりはしっかりしとるわ!」
「どこがだよ!」
「むっかーーーーー!!!!」

食堂でぶちぎれるおれと悠仁。いや、おれも黙ってられねえ。だってユリナちゃんって高校生なんだぞ。
ヒートアップして立ち上がって罵り合うおれと悠仁の間に、呆れた声が割って入った。


「何やってんのお前ら。悠仁までヒートアップするまでめずらしいじゃん」
「「五十嵐(いがらし)さんっ!!」」
「今日も仲良いねえお前ら」

おれと悠仁のセンパイのイケメン五十嵐さん。卒業してどっかの大手に入ったって聞いたけどなんでここにいるんだ?悠仁もおんなじことを思ったのか、びっくりした顔で固まってる。

「今日駅前のビルで企業説明会あっただろ?だからそこに行ったついでに母校にも寄ったんだよ。都内で働いてるからここに来る機会はめったにないしな」
「へええー!お久しぶりです!」
「おう」

にかっと笑っておれの隣に五十嵐さんが座る。それにならっておれと悠仁も座る。

「で?なにが起こってんの?」
「「それがっ!!」」
「あー悠仁、お前が話せ。瑞貴(みずき)は黙ってろ」
「なんで!!」

文句を言うおれに右手だけで制すると、悠仁が事細かにおれの発言を言ってくる。なんで覚えてるんだこいつ!嫌味な理系野郎だ!





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