∴ 05

「な、なんで…」
「犬猿の仲とか言われてるけど、部長ツンデレさんじゃないですか」
「〜っ」

直球に言い過ぎたせいか、いつものクールな顔が乱れまくってる。
ずっと見ていると怒られそうだから、ファインダー越しで部長を見ることにする。

「…なに笑ってるのさ」
「いや、部長も人間なんだなあって」
「そりゃそうさ」

カシャ、カシャ。
シャッターを切る音が響く。

「森高、君、すごい素敵な顔で写真を撮るね」
「えっ」
「なんだかつられて笑ってしまう。君のその笑顔を見ると、みんな嬉しくなって笑うんじゃないかな」

僕みたいに。
ふわり、と部長が笑った。すごい綺麗。逃すものか、と指に力を込めた。



「すごいね。やるじゃないか森高」

現像してみると、きれいに笑っている部長が写っていた。

「ありがとう森高」
「いえ。部長、一枚どうぞ!」
「うーん…そうだな、じゃあ記念に貰ってくよ。ありがとう」




その1か月後ほどに、部長と委員長が一緒の部屋に入って行くのを目撃したという情報が、学園内を駆け巡った。




最近は、告白ラッシュは収まったのか僕に依頼してくる人がいなくなった。またのんびりと自分の好きな写真を撮ろうと歩いている毎日が続いていた。そんなある日、夏にホットコーヒーを飲むという行為がなんだかクセになった僕が、一人コップをすすっていると、コンコンとノックされる音が聞こえた。


「はーい」

立ち上がるのは怠いから声だけで応答すると、がちゃりとドアが開いた。


「…わお」
「写真撮ってくれる?」

にこりと笑顔で立っていたのは、会長や風紀委員長と並ぶくらい有名な、3年生のセンパイだった。





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