∴ 01

僕の通っている全寮制の男子校、絶対に部活に入らなくてはいけないという規則があった。
運動もいまいちだし、生徒会なんて入るような器量もない僕は、自然と文化部へと目を向けることになった。
そこで出会ったのが、写真部だった。
カメラのシャッターなんて、携帯か旅行先で頼まれたとき以外にか押したことがなかった僕は、この年の1年生で唯一の入部希望者ということで、破格の待遇で招かれた。
招いてくれた部長は、目を見張るほどの美人さんだった。表情筋が鈍いのかまったく笑わないけれど。
そんな何を考えてるかわからない美人さん、の部長から、ただ一言。

「あげる」

はい、と渡された一眼レフ。はい、なんて全く仲良くない人に簡単にあげるものじゃない品物を渡されて、きょどる僕を後目に「じゃあ」と帰ってしまう。
悪いですよと何回も何回も部長の姿を見かけては追いかけて返そうとしたけれど、頑なに受け取ってもらえなくて。
一回でも撮ってみろ、と言われて仕方なくファインダーを覗いたら。

「う、わあ…」



――――楽しくて、どっぷりはまってしまった。






そんな僕が写真部に入ってもう1年がたった。
部長は3年生で実質引退で、僕が部長に任命された。
それも恐縮だからって追いかけまわして撤回してもらおうと思ったけど、周りに「部長」と呼ばれて悪い気がしなくて、気づけば部長になってた。



「森高は馬鹿だなあ」
「へ!?」
「間違えた。単純で扱いやすい」
「言い直した意味ないですよっ!」


受験生だけど、部室で勉強をやっていた方が落ち着くと言う変わり者の部長は、引退と言いつつも毎日部室に来てくれる。
その横でレンズを磨きながら、部長の勉強風景を適当に写真にとっては消されたりしていた。
ちなみに部長はなんと副会長も務めている。驚き。そっちは完璧に引退したと言っているけれど、まだ引き継ぎが終わってないらしくて会長に追い掛け回されていた。それでも飄々として部室に来て「匿(かくま)え」とか言われる。なんてことだ。



「最近森高は人物を撮るのが好きなのか?」
「あ、いや、そうじゃないんですけど…」

最近僕が撮った写真を見ながら、部長がぽつりと零す。
ちなみにほかの部員は各々写真を撮りに行ったり、サボリだったりと自由に行動している。
どの写真を見てもにこにこと笑っている写真に写っている男の子たちを見ながら、「いい笑顔だ」と神妙にうなずいている。


「部長に言われると嬉しいです、ありがとうございます!」
「いや、みんな驚くほどいい笑顔だ。全部森高が撮ったのか?」
「はい!最初は、依頼されたんですけど―――」


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