∴ 17

――――――目を開けると、見慣れない場所だった。
オーガニベート国とは違う。
見慣れない機械が走り、人々の服装もちがう。なにもかも違う。
けたたましい喧噪にびくびくとしていると、手が自然とふわりと握られた。


「どう?ここが日本だよ」


ミツミさんがいた。
ぼくはなにがなんだか分からないと、口をぱくぱくしていると、「とりあえず俺の家にいこーか」と僕の手を引いて歩き出す。


「ほら、リオ見て」
「?」
「髪色。黒とか茶色とか金色とかいっぱいいるけど、ピンクとか青とかは全然いないでしょう?」
「……ほ、ほんとだ……」

さっきからたくさんの人とすれ違うけれど、みんな色の明るさに差はあるとはいえ、オーガニベート国とは全然違う。

「だからリオの髪なんて全然変じゃない。むしろ綺麗だよ」
「―――っ!」

初めて会ったときにも言われた言葉だ。胸がばくばくとして苦しい。




「ただいまー」
「おかえりー。もー光海どこいってた……あら、リオちゃんじゃないー」
「えっ?」

ミツミさんのお家だという場所に連れてこられた。随分こじんまりとしている。神子様のお家なんだからもっともっと大きくて当たり前なのに。
戸惑う僕の手を引いて、ギイと扉を開ける。出てきた女の人にミツミさんが挨拶をする。知らない人だ、と自然とミツミさんの手を握る力を強くすると、ミツミさんも同じように握り返してくれて安心する。
そうして僕と目が合うと、にっこりと笑って僕の名前を呼んでくれる。だけど僕はこの人のことを知らない。


「リオちゃんと一緒だったのね。上がって頂戴ー」


なんだかわからないけれど、ミツミさんに連れられて階段を上る。
俺の部屋だよ、と連れられた場所は、ハイドさまが用意してくださっていた部屋よりもだいぶ小さかった。


「へー。母さんもリオのこと知ってるようになってるんだ。すげえ」
「???」
「この世界がリオを受け入れたってことになるのかな。これは」


訳の分からないことを言われてさっきから頭がクエスチョンマークでいっぱいだ。


「あの国では、神子は災厄を祓うために来た存在だっただろう?」
「はい…」
「だから、約束通り祓ったんだ。俺の国に」
「……?」
「つまり、リオの存在をあの国から消し去ればそれで解決するってことだって、すぐ思った。だけどどうやるか分からなくて今までもたもたしていたけれど、やっとわかったんだ」


僕が状況を理解できるようにゆっくりゆっくり話してくれる。
そのおかげで少しずつ何が起きたか呑み込めるようになった。


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