∴ 03 「も、時昌動いてよ」 「…」 「時昌ぁ、…」 恵がいくら呼びかけても時昌は反応しない。 こんなことは初めてだと周りが戸惑う中、時昌は恵を背に隠すと真っ直ぐ転校生の元に向かっていく。 「ときま―――」 「勝手に名前を呼ぶな」 しん、とする教室内。 目を丸くして驚く転校生に、一歩一歩近づく。 そうして壁際まで追い詰めると、右手の拳を転校生の耳すれすれにぶつける。 びりびりとした音と、見たことのない時昌の様子に恵すら驚いていた。 「―――これ以上ぐだぐだ言っていたら、殺すぞ」 まぎれもなくそれは、脅しでもなく、本気の殺意だった。 愛する転校生がこんな目にあっているというのに、学園のツートップはなにも動かない。助けることすらしない。 「いやー。やっぱり、厄介者はヒメサマに近づけるに限るな」 「間違いないね」 「…え?」 呆然とへたり込む転校生を後目に、会長と副会長は種明かし、と一連の言葉をつらつらと述べる。 「そうしたら、勝手に時昌が処理してくれるもんね」 「ああ。よかった。…あ、転校生」 「――え?」 「お前のその正義感強いとことか、ぶりっこなとこ、虫唾が走るほど嫌いだったよ」 転校生は学園から姿を消した。 そうして戻ってきたのは、いつも通りの日常。 ある姫は騎士をないがしろに扱う。 騎士はそれに黙って従う。 王様と王子様は王国を壊そうとするものに容赦ない。 国民は、自分たちの暮らしの豊さを受け入れ、それ以外はなにも見ないふりをする。 さあ、一番くるっているのはだあれ? おわり 壁ドンじゃあああ。 |