∴ 02 人気者の転校生だが、このクラスでは受け入れられなかった。 長年、恵を見ていたクラスメイトは、可愛らしい顔で大層わがままを言う、だけど決して悪いことはしない恵のことをなんだかんだ好きだった。姫様と愛でるくらいには。 だから、いきなし来て中心にいようとする転校生のことを、みんなどこかしら嫌っていた。 特にこうやって、正義感丸出しのとこが。 「ねえ恵くん。それって、どうなのかな…」 「なにがあ?」 「いつも膝の上に乗って、時昌くんとずっと一緒にいるの、僕、よくないと思うんだ…」 「なんでえ?」 きた、お説教。 もう何度目かわからない正義感ぶった言葉に、恵は時昌の胸に顔をうずめうとうとしている。 「だって恵くん、時昌くんの気持ち考えたことあるっ?」 「はあ?」 「いつも迷惑そうじゃんっ!」 あまりにも自分の言葉を真剣に聞かない恵にしびれをきらした転校生が大声でわめく。いつの間にか廊下にはギャラリーも集まっていた。 ざわめきがしたと思うと、転校生目当ての生徒会が教室に入ってきたところだった。 「なんだこの騒ぎは」 「可愛い――のせいですかね?」 この学園のツートップが寝ぼけたことをいいながら転校生の元に近づく。それに瞬時に顔色を変える転校生。 まるでメスだ。 いい男にすり寄るぶりっこ。ますますクラスメイトは転校生への嫌悪感が増した。 「どうした?」 「あ、かいちょ、…」 「……なんだ、ヒメサマか」 そう言うと、見下したかのように恵を見る会長。 「……なぁに、その眼は?」 「いや、別に…」 いらっとする恵の視界を、突然時昌が覆う。 「恵」 「……はあい」 そう言うと、恵はぐるりと回りに背を向けて時昌の胸に顔をうずめた。 「うるさいから、違うとこ移動しよーお」 「わかった」 恵を軽々おひめさまだっこで持ち上げ、後ろの扉から出ていこうと歩き出す時昌。 それを許さないのは、転校生だけだった。 「待ってよ!」 ふられた女のように癇癪をおこし、時昌の背中に抱きつく転校生。 その衝撃に、時昌がぐらつき恵を支えていた両手のバランスが崩れる。 「っわ…」 落ちそうになる恵をすんでのところで支える。 「恵、大丈夫か…」 「うん、…びっくりした」 ばくばくと鳴る胸に手を当ててほっと一息つく恵に、時昌の瞳がゆらりと陰った。 |