∴ アンダースタン?(不良×馬鹿)


とある昼下がりの高校。自習中の教室では唸り声が響いていた。

「う〜〜〜〜〜ん……」
「どうしたー?」

あまりにも深刻そうな男の様子に、まわりもただことじゃないと話しかける。

「やー、このね問題がね、どーやっても8になるんだよー」
「おう」
「でも答えには9って書いたるんだよねー。誤植かー?」
「そりゃお前が違うべ」
「えーーーー?」

だって何回も計算しなおしてるんだよー、でも8になるもんー。
ぶうぶうと文句を言う男に、クラスメイトは笑いながら「そりゃお前のミスだろ」と至極正しいつっこみをする。

「いや、これ問題がおかしい!」
「もっかい解き直せよばか」

はははとにこやかな空気が流れる教室で、ガラーっとドアが開く音が大きく響いた。入ってきた人物を見て、ちょっと静かになる部屋。
みんなの注目を浴びた男は、人工的に染められた銀髪をかき乱して舌打ちをする。少し緊迫した空気になる中、問題を解くのに夢中な男はそれに気づかない。

「いやーこれやっぱ8だよー、何回やっても8−!」
「空気読め佐野!」
「だってさあー」

うーんうん唸る佐野に、銀髪の男が近づく。
やばい佐野やられる!
クラスメイトが固唾をのんで事の成り行きを見ていると、佐野の机を覗き込む。そうして少し目を通したかと思うと、

「……ばかかお前、途中式の計算からちげえよ。なんで3+4が8なんだよ」
「…………おおおおお!!!解けた!!!やりました!!!」
「小学生レベルかお前は」

そういうと、佐野の隣の席だった男はどかっと長い脚を組んで座る。
佐野はやっと解けた問題を上に掲げて、ほおーと呆けている。

「やったーやったー!!お前は天才かあああ!!やりました、うちのBクラスにも天才はいましたよ!!!」

興奮したように銀髪の男、竜胆(りんどう)の周りを回り喜ぶ佐野。猛獣にかけよる小鳥のようだとクラスメイトたちはそう思った。
竜胆は怒ってないのかと思うと、すごい顔で佐野をにらんでいた。

(うわあああやばいじゃねえかあああ)

だけど気づかない佐野は、「天才がおるぞーー眼鏡かけてないのにすげえーーー」と眼鏡差別なことを大声で言っている。
そうしてさっき馬鹿にしたクラスメイトの元に自慢しに行こうと竜胆の前を離れようとした佐野の腕をつかむ。

「うおっ、なんだりんどー!」
「お前………」
「やるのかりんどーー!!」

おおっ、臨戦態勢になった佐野。でもお前じゃ勝ち目ないから帰ってきなさい。
そう思い止めようと足を踏み出したクラスメイトたち。だけど

「お前は……」



「お前はなんでんな可愛いんだよりんどーとかなんだよ舌ったらずすぎて可愛すぎんだろ天才とかお前あんなんで天才とか言うなよ馬鹿か馬鹿なのかでもそこも可愛いんだよボケふざけんなとりあえずそんなことばっか言ってると抱くぞテメエぼけがァ!!」
「えっ?ば、ばーかばーかっ!」


――――その日から不良のレッテルを張られていた竜胆は、変態不良という肩書に変わった。



おわれ


佐野は竜胆の文句が最後しか聞き取れなかったんで、ボケって言葉だけに反応して言い返してました。





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