∴ 04

目を開けると、その人のドアップだった。
金色の髪の毛と、こげ茶色の瞳が目の前にあって大声を上げる。

「わあああっ!」
「よかった、気が付いたんだな!!」
「えっえっ」
「あーごめん、お前気絶しちゃってさ。ここ医務室ね。んで、俺、立花光海(たちばな・みつみ)っつーの!お前は?」
「り、リオンです」
「リオン……じゃあリオな!」

リオなんて呼ばれるのは初めてだ…。
タチバナミツミ……なんだか不思議な名前。それに見慣れない服も着ている。これはなんだろう…。ぷらぷらと胸元でゆれているものを引っ張ると、頭上で「うおっ」という声がした。

「あ、す、すみませ…っ!」
「なんだー?ネクタイがどーかしたのか?」
「……ねくたい?」

ねくたいというのか、これは。不思議なものだ、用途はなんなんだろう。ちょっとどきどきしながらそれを触っていると、ミツミさんが恐る恐ると言ったように声をかける。

「リオ、ここどこだ…?」
「え?」
「日本か?」
「ニホン??」

聞きなれない単語に目をぱちくりさせると、はあああと大きなため息が聞こえた。僕以外にこんなため息を吐く人がいるんだとちょっと嬉しくなる。

「じゃあアメリカか?」
「あめりか?」
「ここは地球か!?!?」
「ち、きゅう…??」

次から次へと知らない単語が流れてくる。僕はまだまだ勉強不足だったみたい。
知らないことだらけで、聞かれているのになにも応えることができない。怒られるかな、と心臓がばくばくしていると、ミツミさんがよしよしと僕の頭を撫でてくれる。

「ごめんなリオ、ただでさえちっちぇ体してんのに、ぎゅうぎゅう抱きしめちゃって…」
「え、い、いえ」

謝られるとは思ってなかったのでちょっとびっくりしてしまう。だって今まで僕に謝ってくれる人なんて、あの3人以外いなかったもの。

「ここはどこなんだ…」
「え、えと、ここはオーガニベート国です!」

ようやく僕にもわかる質問が来て、ついつい勢いよく答えてしまう。

「……オーガニベート……?……知らねえな…」

だけどまたまた悲しい顔をされてしまったから、僕も悲しくなってしまう。
やっぱり僕は悪魔の子なんだ…。
しゅんとしていると、ミツミさまがそれに気づいてぎゅうと抱きしめてくれる。今度は力加減をして。

「リオ、俺、なんか異世界から来ちゃったみたい」
「…いせかい??」
「そー。…ニホンってとこからさー」
「……えと、?」

困惑して僕が聞き返すと、「ごめんなこんな小さい子に言ってもわかんねえよな」とまたくしゃくしゃされる。

「えと、僕、14歳です…」
「14!?まじかよ、俺と3つしか変わんねえのかよ……!」
「ミツミさまは17歳なのですか?」
「なにそのミツミさまって!きも!呼び捨てでいいって!」
「え、でも…」

僕なんかが呼び捨てにしてはいけない。だって僕はこの世界で一番地位が低いのだから。
そういうと、困ったように眉を寄せてしまう。

「なあリオ」
「?はい」
「なんで悪魔の子って、言われてるんだ?」
「え……」

ずきん、と胸が小さな音を立てた。

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