∴ 01 どうしてもお金が必要だった。 日給のバイトでも足りない。 どうしても今月中に20万円が必要だった。 「……おにーさん、今からひまー?」 運よく見た目がいいおれが最終的に思いついたのは、体を売るということだった。 だけどどれだけよくても、20万で買ってくれるような人なんていない。 昼は喫茶店のバイトをし、夜は相手を探すという。 おれの家の近くやバイト先とは遠く離れた駅前のホテル街をうろつく。 さみしそーなお姉さんに話しかけようとしてたけど、声をかけてくるのは男だけ。 ハゲたおっさんやデブなおっさんばっかだし。 それでも期日が迫ってるから、選ぶこともできなくなった。 20万ていう金額を提示すれば、逆上してくるような男や女ばっかだったから、おれはせめて10万10万にしようと考えた。 (2人相手か…) 裕福そうな女はどれだー。 じーっと見つめていると、ぽーっと熱に浮かされたようにおれを見返してくるいろんな人たち。 彼氏連れかよ。 うーん学生っぽいし無理だろーなあ。 通り過ぎていく人を真剣に吟味していると、ぽんっと肩を叩かれた。 「っ!?」 「何してんだ」 振り向くと、一目で上等だと分かるスーツに腕時計、靴を身に着けた男の人だった。 強面だけど、誰もが振り向くイケメン具合。 (ためしに………) 「おにーさん、おれを10万で買わない??」 瞬間、ゆがめられる顔。 わーお10万でもやっぱ厳しいかああ。 だけど違ったみたいで。 目の前のお兄さんがずんずんと迫ってきて、壁際に追い込まれる。逃げれないようにか両腕で閉じ込められて、おれはお兄さんの顔をじっと見つめ返す。内心は心臓ばっくばく冷や汗だらだらだけどな! 「お前、こういうのは何回もやってんのか?」 「やってませんお兄さんが初めてです!!」 だいたいおれから男に声かけたのは初めてだし!おれは女の人を狙ってたのに! ぱにくってるおれは何も考えずにそう喚きたてると、噛みつくようなキスをされた。 |