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「ニカっ、はなし…」
「そうしたらお前、また逃げんだろ…」

もうおれの心臓はばっくばく。ニカも走ったからばくばく。

「なあ、なんで避けた、俺のこと」
「……」
「――理玖(りく)、言え」

ここでめったに呼ばないおれの名前を言うなんて、ずるい。

「…………おれが悪いから、ニカは悪くない」
「……何が」
「………もうちょっとしたら、元に戻るから。ちょっと、待っててよ…」
「待てない」
「……なんで」
「お前に避けられるの、嫌だから」

その言葉に、こらえていた気持ちがあふれた。

「だ、って、だってニカ、絶対おれのこと軽蔑する……っ!」
「しない」
「おれ、おれ、」
「ん?」
「……き」

聞こえない、と更に距離を縮めてきたニカを、火事場の馬鹿力で突き飛ばす。だけどおれより体格もよくて身長もでかいニカはよろめいただけで、今度はおれを前から抱きしめてくる。さらにさっきよりも気まずくなって、抵抗したのにすべて封じられた。

「聞こえないから、もっかい言え」
「………ニカのことが、」
「その次」


おれは腹をくくった。


「ニカのことが、好きなんだよっっ!!」



廊下に響き渡るおれの告白。そして次の瞬間、泣きわめくおれ。


「っで、でもっ、ぜったいやめるからっ、お、おれっ、すぐにわすれるからっ…」
「―――――は?」

ニカの顔はぼやけて見えない。だけど声からして怒ってる。気持ち悪いって、おれのこと。

「えぐっ、ひく、お、男同士だしっ、きも、キモイって思われて、も、ずびっ、しょーがないけど、っと、どもだちやべない゛でえええ」

うわあああんとガキみたいに廊下でなくおれ。ギャラリーもびっくりだよ。
それでもおれは泣き止めないし、ニカは混乱してるのか抱きしめる力を強くしてくる。そうしたら鼻水がつくから、一生懸命顔をそむけてるけど、一層強く抱きしめてくるから。

「あーあ、派手にやったなあトミー。ていうかニカその顔まじ性犯罪者」
「…ヒトの鈍さはもはや病気レベルだな」

パーシーとジョーの声がする。教室の真ん前だし、騒ぎに気づいてきてくれたのかも。
この二人にもおれの気持ち知られちゃった。これからよそよそしくなったらどうしよう…。

「うあああパーシいいい、ジョおおおお」
「うおっ」

そうしたらいてもたってもいられなくて、二人の声がする方に泣きながら歩き出そうとするけど、それでもニカは離してくれない。

「ニカ離してよおお」
「どこ行く気だよ」
「パーシーとジョーのとこおお」
「ここでいいだろ」


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