∴ 3/5 「……ヒト、見つけたぞ………」 「………やぁ、ニカ」 あれから空き教室に隠れていたら、息を切らしたニカに見つかった。急いでニカのいる扉とは逆から出ようとしたら、先回りされて鍵を閉められた。二人きり。 とりあえず無難に挨拶から始めたら、血管がぴく、ぴくってしてた。ごめんなさい。 「パーシーとジョーは?」 「教室」 「じゃあもどろーぜー」 「…ヒト」 「……はい」 とりあえずこの状況はやばい。 二人きりだし、今ちょっと心臓がどきどきしてる。ニカが怖すぎるのもあるけど。 一緒にいたときはあんま意識してなかったけど、ニカってイケメンだったんだな。これは他校の女子からもてるはずだよ…。 「…なんで最近避けてんだよ」 「……さ、避けてなんか…」 「避けてんだろ」 断言するように言われたら、なにも言えない。 押し黙ると、ニカがだんだん近づいてきた。触れようと手を伸ばしてきたのを、とっさに振り払う。パシっと乾いた音がした。 「……あ…」 「………」 嫌な沈黙が間に落ちる。 「すまんニカ!!!」 固まっている二カの横をすり抜けて、そのまま教室を飛び出した。 はやくパーシーとジョーのとこに戻ろう。まだ無理だ、体が拒否反応を起こしてる。 振り払ったとき、ニカ、傷ついてた。 早く元に戻ろう。これはまずい。もう友達にも戻れないかもしれない、嫌われたかもしれない。 振り払った指先が、じんじんとしびれるような熱を持っていた。 「ヒトォ!!!!!」 「――――っ!!」 いきなし廊下の後ろからおれを呼ぶ声がする。間違いない、ニカだ。 振り向くと、猛ダッシュでおれめがけてダッシュしてる。正直怖い。 「逃げんなボケ!!!!!」 「無理!!!!」 廊下を真っ直ぐ行ったところに教室があるのに、おれの足は勝手に下に降りて行った。 ますます遠ざかる教室に対し、ますます近づくニカとの距離。 そういやニカ、むっちゃ足早いんだった……! まずい、これはまずい。せめて教室に戻ろうとまた上を目指し階段を上る。ダッシュで登るのむっちゃきつい。 はあはあ息切れしながらもやっと教室が見えて気が抜けたおれを、いつの間にかすぐ後ろにいたニカが捕まえた。 「…はあ、はあ、…っなに逃げてんだ、お前…」 「……はあ、はあ、はあっ…」 廊下の真ん中で息切れするおれたちの周りに、いつの間にかギャラリーが囲んでいた。 抱きしめられてることに気づいて、慌てて離れようと抵抗するけど、さらに強い力で抱きしめられた。 |