∴ 2/3 穂村としばらくその調子で話していると、僕の携帯が震えた。 「八尋からだ」 「お。なんだって?」 「今どこ。 だって。穂村、といます、」 「來名(ゆきな)お前メール打つとき声に出して言う癖やめろよ」 「まる、っと…。ん?なにか言ったか?」 「なんも…」 返信をしてすぐにまた携帯が震える。今度は着信、八尋から。 「ごめん、電話出ていい?」 「いーよ」 「もしもし、どうしたの?」 『穂村といるってどういうこと』 「?僕が呼んだんだ。八尋が待ち合わせに来なかったし、久しぶりに穂村に会いたかったからね」 『は?なにそれ。俺じゃなくて穂村優先したっつーこと?』 「?そうだけど。だって八尋、どうせほかの子と一緒なんだろ?待つだけ時間の無駄じゃないか」 なんで僕が切れられているのか、まったく見当もつかないなあ。 八尋は前から、僕がほかの人を優先していると不機嫌になる。特に穂村と会っていると知った時のセックスは、次の日立てない位激しいから嫌いだ。 だから本当に久しぶりに八尋と二人で遊んだ今日は、とてもいい日だ。 『楽しかったかぁ?ゆきちゃんよぉ』 「ああ。穂村と一緒にいるのは、本当に楽しいよ」 素直な気持ちを言ったら、目の前にいる穂村が真っ赤になった。照れ屋だなあ。それとは反対に八尋の舌打ちが聞こえる。耳元で言うなんて、なんて失礼な男なんだ。 「用件はそれだけか?ならもう切るぞ」 『ゆき、今から俺んち来い。今すぐにな』 「なぜ?僕は今穂村と会って『俺のが約束先だったろ。じゃあな』…切れた…」 ツーツーと着信が切れたことを知らせる無機質な音が流れる。 まったく、なんて面倒な男なんだ。 「ごめん、帰らなきゃいけなくなった」 「…そーか、残念だ」 「明日また会えるか?」 「17時にバイト終わるから、そのあとだったら大丈夫よ」 「そうか、じゃあ、明日も会おう。穂村ともっと話したい」 「來名チャン、それすっごい殺し文句よ…」 今度は顔を覆う穂村。本当に見てて飽きない男だ。 |