∴ 2/3 そしてなぜか僕は、そんな彼の親友に認定されてる。 親友が親衛隊長って、なかなかないかもなー。と最初は新鮮な気持ちだったけど、こうも毎日変わり映えしないと、それは飽きるよ。 最初はいちいちリアクション取ってたりしたけど、今ではもうめんどくさくてなあなあ。 「おいっ!」 「いたいよ、はなして…」 「嘘つくなよ!そうやって嘘ついて周りを心配させようとして、ほんとお前はだめだなっ!」 手形できてんだけど。 思いきり掴まれた手首に抵抗するけど、意味の分からない王道持論でかわされる。 腹が立ったから、思いっきり足をローファーのかかとで踏んでやった。それはもちろん知らんぷり。痛がってたけど、そしらぬ顔でその場を後にした。 「あーどっかに面白いネタ落ちてないかなー」 親衛隊員たちの恋バナの方が、よっぽど面白くてネタになる。 それをネタにして最近公開した話は拍手でも好評みたいで嬉しい。 「今の時代は何を求めてるんだー」 もう僕は、今の学園に完全に飽きていた。 世の中の腐男子みたいに、はあはあ荒い息を上げたり、BL用語を叫んだり、そんな軽率な行動はとらない。 僕は絶対に腐男子受けとかいう二の舞にはならないと、入学当初に意気込んだんだ。 だから会長とのキスを見たときも、内心はきたーーー!と思ったけど、親衛隊長としての反応をしたし。 次々とコンプされてく美形たちの独占欲とかも、まあ最初はおいしいと思って見てたよ。けど、もー飽きた。 僕って、三次元にはあんまり萌えないみたい。 そうしたら、覚めるのも冷めるのも早かった。 結果、僕はまた二次元萌えに戻るのだった。 学年主席だから、特権として一人部屋に住んでいる僕。 王道と同室だったらと思うとぞっとする。しかしなんで王道は同室の子を連れまわしたりせずに、僕に目をつけたんだろーか。まああの脇役くん、君のおこぼれをもらう気満々だから、野生の勘で避けたんだろうか。まあいいや。 「はー、やっぱり僕は二次元に限るな」 そうして、僕は王道が呼ぶのも無視して、食事も自室で済ませて、残りの時間はひたすら小説めぐり。 時間もあいたことだし、ネタもいろいろできたし。 久しぶりにサイトを開いてみると。 「…なにこれ」 拍手や掲示板が、たくさんの同じコメントで埋まっている。 尋常じゃないほどの量だった。 「あの続きは?」「もう書かないのですか」 「教えてください」 「返事ください」 「どうしたんですか」 「怖がらないで」 「なにが不満なんですか???」 ―――アク禁に、まとめてぶち込んだ。 ―――…そうして元凶となったあの王道小説は削除し、僕は更新停止していたことを詫びて、また更新を再開した。 あの小説が消えたことを惜しむ人はいたけど、もうあんなコメントは来なかった。 これで平和になった、僕は安心した。 運よく王道に会うこともなく、親衛隊のみんなと一緒にいたり、一人でいたりと、実に有意義な時間を過ごした。 あんなにくっついていた彼らが離れたのを、軽視していたのがだめだったなと、今なら思う。 そうして晴れ晴れとした気分で、金曜日を無事に迎えた。 明日は土曜日だし、久しぶりに中学校の地元の友達に会おうか、と計画していると、どんどんと大きく鳴る扉。 「…なに…?」 でも鍵がかかってるし、あくことはない。 なのに。 ―――――ガチャ。 |