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「うわあうわあ!!僕も恋したいよー!!」

雰囲気に耐えられなくなった架月がそう叫ぶと、それをきっかけにクラスメイトたちも「彼女ほしいー!!」「付き合いたいー!!」などと言った欲求を口々に雄叫びを上げる。
彼女持ちの外山は携帯をいじりどこかに連絡を取り始め、井上と町田はお互い肩を組んで慰め合っている。

収集がつかなくなるほど盛り上がった教室内。
一番最初に回復した架月が、びっくりしているチロに向かってマイクを突き立てるようにこぶしをぐっと出すと、

「チロちゃん、くろやんのどこがすきっ!?」
「え、えっ!?」
「だってどうせ言わなきゃいけないんだから!言ってよー」

理不尽な架月の言い分に戸惑いながらも、井上や町田がにやにやと寄ってくる。

「チロー、俺らも聞きたいなー」
「ほれほれ、練習だって」

わしゃわしゃと髪の毛をなでまわされ、ぷうっと膨れた頬をぶすっと指をさされてつぶされる。間抜けに空気が抜ける音が漏れる。

「ほら、3・2・1、どん!」
「ふぉっ!」

人間なぜだが急かされると慌てて言ってしまうみたいで。

「か、かっこよくて、い、意地悪なことばっかゆうけど、でも、みんなのとこちゃんと見てて、…」
「………」
「や、やさしいとこが、好き…っ」

途中恥ずかしさから目をつぶってしまったけれど、自分の言いたいことは言えてほっとして目を開けたチロの目の前には、

「―――チロ」

呆然と、少し頬を赤く染めた、黒崎がいた。



「ふ、ふにゃああああ!!!!」

好きだと気付いた時とは比べようにならないほど大きな奇声を上げると、そのまま逃げようと方向転換をする。
だけどそんなことは許されるはずもなく、簡単に腰にがっちりと腕を回され、そのまま黒崎の胸元へと押し付けられてしまう。

その直前に見えた教室の様子は、架月はあわあわと口をぱくぱくさせながら驚き、井上と町田もびっくりしたように目を見開いている。ほかの生徒たちも似たような反応で、どうやらクラスメイトたちが黒崎を呼んだのではなく、次の授業のために教室に訪れた黒崎に偶然聞かれてしまったらしい。

盛り上がっているせいでまたしても聞きそびれたチャイムは、とっくに授業開始の音を鳴らしていた。



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