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うひゃああ、と自覚すればするほど、無意識のうちにやってきたすべての行動が恥ずかしくて仕方がなり、チロは座っていた椅子の上に両足を乗せ、その間に顔を埋めてひたすら沸き起こる羞恥心にあわあわとしていた。
その様子に満足した架月は、周りから拍手喝采を浴びながら椅子からゆっくりと降りた。

「もー、チロちゃん鈍すぎ!」
「そーだぞチロ。こっちとしてはお前の鈍さにびっくりだ」
「右に同じく」
「俺も」

購買から戻ってきた井上たちが、廊下に集まっていた野次馬をかき分け教室の中に入ってくる。
行儀悪くいちごミルクを飲みながら町田も井上に続くと、教室でじっと様子を見ていた外山も同じように口をはさんだ。

「ちなみにいつからそんな風に思ってたの?」

自分の分のご飯はとっくの昔に食べ終わった架月は、今度は単純に恋バナをしようとチロに話しかける。
だいぶましになった顔色で、それでもほっぺは普通の人よりもピンクに染まっているけれど、その状態でちらりと顔を上げたチロを囲むように、クラスメイトたちはにこにこと各自ご飯を食べながらチロの言葉を待っていた。

まるでディベードをするかのように大々的に机も動かされ、その中心に一人被告人のようにぽつりと残されたチロは、たどたどしく拙い話し方で、恥ずかしくて仕方がない自分の行動を思い返す。


「え、えと…最初は、センセに1年前から、ずっと見てたって言われたとき、…」
「ふむふむ」
「僕、ほんとにいじめられてるって思ってたから…。ちゅうとかされても、からかわれてるって思ってたから、センセのこと、信じてなかった…。け、けど、そうやって言われてから、ホントなんだぁって思ったら…」

センセのこと、拒めなくなっちゃった。

自分の娘が彼氏とのなれ初めを話しているのを聞かされているような、妙に甘酸っぱい空気がクラス全体を満たしていった。
チロの純粋な言葉にむず痒い思いをしながらも、井上や町田はその妙な雰囲気で照れたのをごまかすように自分のご飯にがっつき、外山は親のように優しくチロを見守り、そして架月はキラキラと目を輝かせて興味津々とばかりに、「それでっ?それでっ?」と続きを催促していた。
それに照れながらもチロが口を開く。

「か、風邪ひいたときとか、センセにおでここつんってされたときとか、抱っこされたとき、一気に体が熱くなって、心臓がきゅーってして…。熱が上がっちゃったって、思ってたけど…」

それは、センセだったから…。
小さな声でぽつりとつぶやいたチロに、クラス中がときめき、今すぐにあまりの恥ずかしさに涙目な小さな体を抱きしめたい欲求にかられた。

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