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「…じゃあ、仕方ねえな」

いかにも慌てているチロを見るのをしのびなく思った黒崎は、安心させるように笑った。その声に顔を上げると、にっ、と口角を上げた黒崎が整った顔にめずらしく意地悪くない笑みを浮かべていた。

「じゃあ、明日の土曜どっか連れて行ってやるよ」
「…え?」
「明日は予定ないだろ?」
「は、はい…」
「決まり、な」

明日井上の部屋迎えに行くな。
ちゅ、と唇くチロの頭のてっぺんに落とすと、楽しそうに鼻歌を歌いながら去って行った。
そこには真っ赤になってずるずるとへたいこんだチロだけが残された。


「え、それってデートじゃん!!」
「デ、デート!?!?」

どこから調達したのか、机の上に山積みにされたお酒の空き缶がゴロゴロと転がっている。
酔っぱらってさらにテンションの高くなった架月が赤くなった顔で叫ぶ。
チロもお酒で潤んだ目を向けて聞き返すと、残りの3人も興味津々といったようにワラワラと寄ってくる。

「おー、とうとうくろやんとデートかチロ!」
「デ、デートじゃな…っ!」
「チロちゃんの初デートにかんぱーい!!」
「「「かんぱーい!!」」」

自分の味方だと思っていた外山も満面の笑みで乾杯をしたことで、チロは自分の味方はここにはいないと悟った。


「で、デートじゃないのに…」


でも、明日は楽しみだなあとお酒のせいでぼおっとする頭で思った。
その頃、黒崎も年甲斐もなくわくわくしているのを感じ、一人で「俺は高校生のガキか…」と部屋で苦笑していたとか。


次の日、見事に寝坊したチロが黒崎に人前で恥ずかしいことをされ大泣きし、あわてて慰める黒崎がいたとか。


end




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