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今日はテスト最終日。
井上と架月は必死に数学の教科書を血走った眼で読み、わりと余裕な町田と外山はその様子を笑って見、チロは自分の席でノートを読み返していた。
監督が井上と架月の苦手な英語教師の永知だったので、余計に青い顔をして解いていた。

チャイムが鳴り響き、最終科目の数学のテストが終了する音が聞こえると、井上と架月は両手をあげ同時に「「終わったあああ!!!」」と叫び、永知に拳骨を食らっていた。
その様子を心配そうにチロが見ていると、殴られた頭をさすりながらも、笑顔で架月が寄ってくる。

「チロちゃん今日ひまー?」
「うん、暇だよ?」

テストが終わったし、なにも予定がない。
このあとの金曜日の予定を思い返しながらチロが言うと、ぱあっと架月の顔が明るくなった。

「ほんと!?じゃあ今日お疲れパーティーしよーよ!!」
「パーティー?寮で?」
「うん!井上と町田と外山も来るから、5人でわいわいしよー!」
「う、うん」

井上と町田の部屋に帰ってから集合ね!とにこにこと満面の笑みで架月は先に帰っていく。それを戸惑いながら見送ると、教室の鍵閉めをしてチロも寮に戻る。
部活も今日からは活動再開なので、いつもよりも若干活気づいた声がグラウンドや体育館から聞こえる。

廊下から外をのぞけば、井上と町田が楽しそうにおしゃべりをしながら走っていた。その様子が微笑ましくて、気づかないうちに一人で笑っていると、後ろから体重がかけられる。

「わ…っ!」
「なーにニヤニヤ外見てんだ、チロ」
「び、びっくりした…センセだ…」

突然現れた黒崎がぎゅううとチロを強い力で抱きしめ、耳元で囁く。ぞくりとしながらも、どきどきした心臓を落ち着かせるようにチロが胸に手を当てると、「どきどきしてんな」とまた低い声で言われるので落ち着く暇がない。

くるりと黒崎に体勢を変えられると、向い合せになる。
黒崎と壁の間に挟まれたチロは、近い距離に目を泳がせる。だがそれに気づいた黒崎にニヤニヤと顔を覗き込まれたので、さっきよりもさらに近くなった顔に真っ赤に頬を染める。
それに可愛いなあともはや口癖になった言葉を心の中でつぶやく。

「今日俺の部屋来いよ」
「え、なんで?」
「テスト終わりの打ち上げみたいな」
「ぼ、僕今日ひいちゃんたちに誘われちゃったから…」

その言葉に一気に黒崎の機嫌が悪くなる。
それが分かったチロは慌てて何か言おうとするが、何も思いつかずあわあわと声にならない声をあげるだけだった。

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