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外は日が沈み、廊下はひっそりと静まり返っている。
いつもならグラウンドや体育館から、サッカー部やバスケ部の活気にあふれる声が聞こえるけれど、今はテスト週間で実質部活が休みなので、少し寂しい気がする。
チロはちょっとセンチメンタルな気分になりながら、みんなと一緒に廊下をわいわいと歩いていた。

一緒にご飯を食べる約束をして途中で井上たちと別れたチロは、隣に住んでいるひいちゃんにばいばい、と手を振り中に入ると、制服を脱いでふうと息を吐いた。
今日町田に教えてもらった化学を復習しようと、リュックの中を漁ってノートを見返そうとしたが、どこを探してもない。

「え、え、ない…っ」

わたわたと慌てながらリュックの中身をぶちまけるけれど、どうもさっき書き込んだノートが見当たらない。
明日教室に行けばいいかな、と私服に着替えようと立ち上がる。
けれどやっぱりいろいろ不安になったので、着替えたら教室に行こう、ともそもそと着替えながら決意する。
暗くなる前に行こう、と思ったら、ピンポーンとチャイムが鳴る。

「チロちゃーん、ご飯食べにいこー」
「お腹ペコペコだよー」
「井上まじ気持ち悪ぃから全力で俺に謝れ」
「え」
「謝って」
「雛沢まで…」

賑やかな3人の声が廊下でドアの外で聞こえたので、後でいっか、とチロはわたわたとカードキーを片手に小走りで出た。


「お腹いっぱーい」
「ひいちゃん小柄なのにいっぱい食べるねー」
「いっぱい勉強したもん!」
「お前あんだけ俺が教えたんだから点数とれよ?井上も」
「「…はーい」」

4人の会話にまわりもくすくすと笑っている。コントのようなやり取りや、容姿のレベルの高さ、そしてチロの小動物っぷりと並外れた黒崎の溺愛っぷりはひそかに学園内で有名だったりする。

「ひいちゃんたち、この後時間ある?」
「?暇だよー」
「僕教室に忘れ物しちゃったから、一緒についてきてくれないかなあ…」

こてん、と首を傾げる。
ふつうの男子高校生がやったらうすら寒いしぐさも、チロがやると似合っているので不快じゃない。
またチロと同様にかわいらしい架月もつられたようにこてん、とまた可愛らしく首をかしげるので、食堂は一種の癒し空間となった。





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