1


いつもはわいわいと賑やかなSクラスでも、さすがにテスト週間はまじめに勉強をする。
あまりにも成績が悪いとSクラス落ちということもありえるので、Sクラス最下位争いの架月と井上は特にやばいのでいつもの饒舌さをなくし真剣である。
井上とつるんでいる割には成績がよく、特に理数がクラス随一でできる町田を先生に、希望者だけ放課後残って勉強をしていた。黒崎は職員会議のためめずらしくいなかった。

「も、モルの計算がわかんない…」
「あー、これは…」
「臨ー!数学のすべてが受け付けれません!」
「奇遇だね井上!僕もだよ!」
「「いえーい!!」」
「お前らは時間使うからあとで!!」

ぶーぶーとSクラスの双璧二人が文句を言いながらも、お互いにこうじゃないの?と知恵を絞って一つの問題に取り組む。
ちなみに井上は英語、架月は国語が学年上位なので、それでほとんどの教科を補っている。
チロは理数が得意ではないが、文系がまんべんなく得意であり、反対に理数ができて文系がからっきしできない町田と二人三脚でテスト勉強をやることが多い。
外山はノートの取り方とヤマのはりかたがうまいので、最終兵器として重宝されている。

「あー、1日目に数学とか地獄すぎる…」
「2日目の英語も地獄だよ…永知せんせー意地悪いからね、きっと変な問題作ってくるよー」

そう井上と架月がつぶやくと、周りのクラスメイトも次々と「俺もさー」「あーわかる」と乗ってきて、気づくと勉強会はいつの間にか愚痴大会になっていた。友達と勉強するときにはよくある現象である。

「駄目だよ、あきりゃ、あきらめちゃ!」

あたふたと噛みながらもチロが止めに入る。町田は井上と架月に数学を教えに行った。
外山はチロには決して見せたことがない顔で、ノートを売りつけにクラスメイトに金額交渉している。

小動物チロに可愛く怒られてはなにも反撃ができない。動物を愛でる気持ちがチロや架月の小動物コンビによって育まれたSクラスの生徒たちは、にやにやと緩む顔を隠しながら、また真剣にそれぞれの勉強に戻っていった。



しばらくあーだこーだとたまに脱線しながらもテスト勉強をし、いつの間にか夕食を食べる時間になった。
4時間ほどやってたんだなあ、と時計を見ればわかる進み具合に、充実感に満たされる。それはチロだけではなく、解放感と達成感に生き生きと周りも輝いていた。
だんだんと口数が少なくなった井上と架月も、だいぶやつれた顔をしながらもよろよろと立ちあがる。
一番やつれていたのは教えている町田の方だったのは不思議だ。




[ 19/28 ]

 
top



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -