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「チロ、最近どうした」
「え?」

それが数日続くと俺もちょっと期待しちまう。
いや、落とすって決めたし、全然いいけど。ただ、ぬか喜びだったら、結構ショック受ける。

「…センセ、僕のことそんな前から知ってたの?」
「…おう」

中学生のチロの姿は今でも思い出せる。
一番小さいサイズのものでも大きかったのか、学ランの袖からちょこんと手が見えているとことか、とりあえず一目見たときから男なのにこんな可愛い奴がいるのか、と驚いたことを覚えてる。それからチロのことが忘れられなくて、女には一切興味がなくなった。地味に悩んでいたら、入試でチロに会って。しかも専願の推薦だったから、春からは会えるという事実に喜んで、それを肴に一人飲んだりした。
チロが入るSクラスの担任になるために裏から手をまわしたりして、ようやく近づくことができた。
今の距離でも満足していたけれど、触れれば触れるほど、もっともっと欲しくなる。
チロに対する思いは加速するばかりで、飽きるなんて考えられねえ。

「…えへへ、嬉しい」

あーくそ、可愛い。

数学教務室に連れ込んで、チロに無理やりプリントを閉じるという仕事を押し付け、二人の時間を楽しむ。
キスもしたり、少し触ったりもした。押し倒しても受け入れてくれてる。ボディタッチには特に拒否はない。それに真っ赤な顔で照れるだけで、最近は泣かれることもない。

―――これは、いける…?

邪な考えが浮かんで、つい手が伸びたとき。

「センセ、閉じ終わったよ」

はい、ときれいに閉じ終わったプリントが差し出される。

「お、おう。サンキュ」

それに手を引っ込める。

「?手、どうしたの?」
「いや、髪の毛になんかついてたから取ろうと…」
「ほんと?取ってー」

何もついていない髪の毛に触れる。とりあえずさらさらと髪の毛をすき、頭をなでる。

「な、なに…?」
「いや、可愛いなお前はほんと」
「ぇ…」

かああ、と瞬時に真っ赤になる小動物に、自分の欲望が煽られたが、ここで手を出したらまた避けられる、と学んだ俺は、ぐっと我慢した。

「チロ、ご褒美だ」

だから、キスくらいは抵抗しないでさせてほしい。


end





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