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風邪で心細くなって、俺の気持ちを疑ったチロに腹が立って、実は1年前からずっと見ていたことを暴露したら。

(なんかチロが、いつもより甘えてくる気がする)

それは俺だけの勘違いではないようで、クラスの奴らも違和感に気づいたのか、こそりと井上が

「くろやん、とうとうチロ食ったの?」
「まだ食ってねえよ」

食いたいけど、まだおあずけだ。そういうと今度は町田が現れ、わざとらしく驚いた顔をしたのに腹が立ったのでとりあえず殴っておいた。わめく町田をさっくりと無視していると、すぐに回復した町田が言う。

「え、じゃあなんであんなチロピンクオーラでてんの?食ってなかったら付き合った?」
「……それもまだだ」
「えー、じゃあさ、じゃあさぁ」

次には雛沢が横から現れる。
こいつらどこから湧いてくるんだめんどくせえ。横には外山もいやがる。

「チロちゃんにようやく気持ち伝わったの?」
「…あー。そういや言ったな…」
「へえ。告白したんですか?」
「告白っつうか、本気ってことを証明した」

チロちゃん、あんなに特別扱いされてたのにまだ信用してなかったんだ…。おい雛沢、憐れむな。残りの奴らもおんなじような目線しやがって、ぶっ潰すぞ。

「セ、センセ」

ゆらりととりあえず井上からぶん殴ろうと決めたとき、くい、っと服の裾が引っ張られて動きを止める。横を振り向くと、チロが遠慮がちに上目使いで俺を見つめていた。
とりあえず前でにやにやしているバカ共を蹴飛ばして追い出すと、チロの小柄な体を持ち上げひざの上に乗せて愛でる。

「どーした、チロ」
「す、数学のプリント、集めました…」

ぽ、とピンクに染まっているチロの頬。
確かに前まではこんなことしたら涙目で抵抗されるか、文句を言われるかだったけど、今日はなんもねえ。
不思議だな、と熱があるのかと額に顔を寄せて熱を測るが特に異常はなし。
良い距離だしそのままキスするか、と顔を覗き込むと、耳元まで真っ赤になったチロの顔。

あーいいやもうなんでも。
可愛いから。

ちなみにここ、ふつーに教室。
まだクラスの奴らも残ってるし、いつの間に戻ってきたのかあの4人もにやにやしながらこっちを見てる。
なのにキスしてくれるっつーことは、もしかして…?

淡い期待を胸に、軽くキスした。


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