1


折笠千紘は、黒崎誉の看病のおかげか1日もたたずに回復した体をベッドの上に横たえながら、じーっとシミ一つない天井を見ていた。
横では黒崎がすうすうと寝息を立てている。
あの日、濃厚なディープキスによって気絶してしまい、目覚めたときはもう夜だった。
夜ご飯を食べる時間ではないほど更けた夜に、朝よりはだるくない体を起こすと、がちゃりとドアが開き半裸で髪から水をしたたらせている黒崎が部屋に入ってきた。

「おー、チロ、大丈夫かー?」
「うん、センセ、ありがとう」

そのままチロのいるベッドに腰掛けた黒崎に、だいぶ楽になったと伝えると、そうか、とふわりと笑った。いつもと違う笑い方に、チロは内心どきんと大きく胸を高鳴らせながらも同じように笑い返す。

「センセ、服着たら?風邪ひいちゃうよ」
「あー?もう暑いから平気だろ」
「だめだよ、僕お風呂上りに髪の毛乾かさずに寝ちゃったから風邪ひいちゃったんだもん」

昨日それだけで風邪をひいてしまう僕も悪かったけれど。
バツの悪そうにタオルで乱暴にがしがしと自分の髪の毛を拭いた後、これでいいか?と聞いてきたので、チロは右手を伸ばして黒崎の髪に触れた。

「センセの髪の毛、さっきも思ったけど、ふわふわしてるね」
「そうか?……さっきって、俺が熱〜く水を飲ませてやった時?」
「!!!」

その言葉に、ありありとさっきの光景が思い出されて、一気に顔が真っ赤になった。
チロのあわあわとする様子にいつもと同じいじめっこのような笑い方をしながら、

「そーかそーか。それほど俺のキスが気持ちよかったか。気絶するくらいだしなー」
「センセのば、ばかっ!!」

真っ赤になって枕に顔をうずめる。
その様子を黒崎はめったに見せないほどのやさしい顔で、チロを見下ろしながら、静かに頭をなでた。



[ 15/28 ]

 
top



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -