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それから永知が自分の担当するクラスに戻ると、ようやくHRは始まった。

「あー、今日も言うことは特になし。…あ、チロ」
「んー…?」

こつこつとチロの席の前に立つと、黒崎は体をかがめる。そしてそのまま自分のおでこをこつんと当てると、「熱があるな」と言った。
黙ったまま黒崎の行動を受け入れていたチロは、「熱、ないもん…」とまた無駄な抵抗をする。
それにきっぱりと否定をすると、頬に手を当てる。
潤んだ眼と上目使いのコンボに朝から元気になりそうになりながらも、

「ほっぺも赤いし、目も潤んでるし、うまそ、いや、風邪だなこれは」
(((絶対今うまそうって言おうとしてた!!逃げてチロ!!)))

クラスメイトの心配もよそに、頬にあてられた黒崎の手を小さな手で自分から包み込むと、

「センセの手、冷たくて、…きもちぃ…」
「!!!!」

チロの心の声に自分で脳内修正をかけてもだえる黒崎。

「あー、チロ、今日は休め。送ってやるから」
「でも…」
「一人が心細いのか?」

こくん、と小さくうなずくチロ。
いつになく素直なチロにこれまたもだえながら、思わずチロの体を自分に寄せる。
そして耳元で言い聞かせるように、

「じゃあ、俺が傍にいるな」
「…え?」
「看病もするから風邪も治るし、寂しくもない。一石二鳥だろ?」

するりと魔法のように低い美声がチロの耳元で駆け巡るが、ふるふると首を横にふってそれを拒否する。
それにむっとしながら理由を聞くと、

「う、でも、ひいきとか言われたり、とか…」
(((今更だからね、うん)))

クラスメイトの心は一つになった。

「今更だろ、そんなの」
「?」

同じように黒崎も自信満々にそういうと、そのままチロを抱き上げ、いわゆるお姫様だっこをした。
いつものチロなら恥ずかしくて泣きながら抵抗するが、黒崎に触れてからか心なしかどんどん上がってきた体温に呑み込まれ、おとなしく身を預けた。


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