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ご飯を食べ終わって解散したあと、千紘はまっすぐ寮に帰ることはなく、一人廊下を歩いていた。
やがて今日体育をやっていた第2体育館にたどり着くと、昼とは違い真っ暗な部屋にびくびくしながらガラガラーと扉を開く。その音にもびびりながらもあわてて中に入り電気をつける。
そして倉庫からバスケットボールの入ったカゴを持ち出すと、その場でぼむぼむとドリブルを始めた。今日の自分のふがいなさを反省し、そして小動物と馬鹿にした黒崎を見返そうと秘密の特訓を開始しようとしていた。

しかし

「おー、チロ。自主練かー?」
「う、うひゃあああ!!!!」

その目論見はものの10分で消え去ったが。

「み、みんなに迷惑、かけれないから…」
「そーか、チロはえらいなー」

わしゃわしゃと頭をなでると、照れながらえへへとぐちゃぐちゃになった髪の毛をそのままに笑う、破壊力抜群の千紘の笑顔に黒崎は起き上がりそうな息子を必死になだめた。

そのまましばらくおしゃべりをしながら二人で夜の体育館でバスケらしきものをしていると、千紘が何か面白いものを見つけたように瞳をきらきらさせて、ボールをついていた黒崎の服の裾を引っ張る。

「どした、チロ」

ついていたボールを即効投げ飛ばし千紘の目線に合わせるように腰をかがめる。

「あのね、センセ!」
「ん?」
「僕、あそこにぶらさがってみたい!!」

きらきらきら。
指をさす方向は、両端に君臨する、バスケットゴールだった。




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