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体育でバスケをすることになった。
千紘は背の小ささではもちろん、運動も不得意だったので、「僕にはボール回さないで!」と堂々不参加宣言をしていた。
それでもまわってきたボールには仕方なしにドリブルをしてゴールまで近づこうと頑張るけれど、3回ほど突いたらつま先にあたって転がる、という周りから見れば小動物がボールにじゃれているようにしか見えない行動をし、試合中にも関わらず、敵味方関係なしに授業を癒していた。

そんな千紘を見逃すはずもなく。

「おいチロ、本気出せよー」
「せ、センセっ!うるさいですよっ!!」

ぼむぼむ、とボールとじゃれている様子を(千紘からしてみればバスケをしている)あきコマで暇な黒崎が駆けつけ、もはやにやけている口元を隠すこともなく、だらしない笑みでデレデレとみていた。

「最近くろやんのキャラ変わったよな。昔は俺様男前だったのに」
「なんかチロちゃんに歩み寄られたらしいよ」
「うわあ…」
「お前ら授業終わったら教室に残って俺の授業用プリント人数分閉じとけよ」
「「げっ」」

ひそひそと試合に出ずに暇な架月と井上が、コートの外で二人並んで会話をしていると、地獄耳の黒崎は一度もチロから目を離さず、けれども後ろの失礼な生徒に対して顔を見ずに的確にいやがらせをした。
二人はひえええと授業後の労働に顔を青ざめながら、口をつぐんだ。

ほかの人よりもバテバテなチロは、体育の授業が終わったあともぐったりとしていた。
居残りをさせられた井上と架月に鍵を任せて自室に戻り、ぐっすり眠ると、こしこしと目元をこすり夜ご飯のために長い廊下を歩く。
途中で制服姿の井上と架月とすれ違い、先にご飯を食べていると伝え、一人席に着く。私服姿の副委員長の外山と一緒にご飯を食べていると、どこから出てきたのか黒崎が後ろからチロに近づき、隣の席に腰掛ける。

そのままお疲れモードの二人と合流し、わいわいとご飯を食べた。


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