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今日は井上昂也(いのうえ・こうや)の誕生日ということで、放課後クラスメイトや同じサッカー部の人たちがたくさんお菓子を持ち寄り、第2食堂に集まっていた。普段生徒が使う第1食堂よりは小さいが、それでも50人ほどの人数は容易に収容できる。
今はテスト週間のため部活はなく、勉強に嫌気がさした各々が井上の誕生日と言う名のお菓子パーティーをしていた。もちろんその中には千紘もいて、今は一生懸命みんなのコップにジュースを配っている。

「見てこれー、作ったんだあロシアンシュー!」

雛沢架月(ひなざわ・かづき)が楽しそうににやにやしながら差し出したのは、小さいシューに可愛くデコレーションされたおいしそうなシュークリーム。

「50個くらいある中で、はずれは昂也の歳と同じ数の17コー」
「結構確率あるじゃん!!!」
「はいいいから引いて、昂也は強制ね」

順番にまわされていくシュークリーム。順当に手元にまわされる。
みんなで井上のためにバースデーソングを歌い盛大な拍手をすると、千紘もぱちぱちと小さな手で本当に楽しそうに笑った。

「じゃあ、みんな食べてーっ」

架月がにっこりと言うと、まずは井上がぱくりと食べる。そして吐きだした。

「うぇrtycvbghjkl;!?!?」
「ちょっと一発目でもうあたったの?さすがだね昂也」

あはははと大爆笑する架月を尻目に、他のみんなは自分の目の前に置かれたシュークリームという名の兵器を真っ青になりながらじっと見つめた。
不安に駆られた千紘が架月に、

「ひいちゃん、な、なにいれたの…?」
「えー?んーっと、わさびとマヨネーズとからしとハバネロと生姜とニラと…」
「も、もういいよ…」

まだまだ続く恐ろしい中身を言い続ける口を止めて千紘は涙目で俯いた。
井上は声にならない声を上げて、そのままトイレへと駆け出して行った。

「ちょっとオレ用事あるから…」
「俺も彼女に電話…」
「食え」
「いや…」
「でもさ…」
「く・え」
「「はい」」

見かねた町田と外山が理由をつけて退散しようとしたが、架月の脅しに屈した。

「まったく、チロちゃんだって食べるのに」
「えっ!」

千紘もまた理由をつけて断ろうとしていたので、架月に言われた言葉で思い切り動揺してしまった。それを見て架月が目を潤ませる。

「チロちゃんも、食べてくれるよね?」
「はい!」

架月の涙目に弱い千紘だった。



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