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「チロ、おはよ」
「うぅ…おはよう、ございます」

あれから15分ほど布団の中で抱きしめられいろいろセクハラをされ、ぐったりとした千紘とは対照的に、きらきらとした笑顔で格好をちゃんとした黒崎は、千紘の手を引いて部屋を出る。

クラスに着いたときは、Sクラスというだけあって、クラスメイトの大半は予習や復習を座ってしていた。井上や町田などと部活の朝練で疲れた人たちは爆睡している。実に有意義に待ち時間を使って、みんなそれぞれのことをしていた。

「おはよーさん。じゃ、HR始めるか」
「くろやんおはよー!遅いよー!」
「チロぐったりしてんじゃん、今日そんなに抵抗されたわけ?」

二人が入ると一瞬にして元のにぎやかなクラスに戻る。
矢継ぎ早に繰り返される質問には答えず、千紘はよろよろと自分の席に戻る。
ちなみにチロの席は、身長が小さいと見えづらいだろ?という千紘にとっては嫌がらせ、黒崎にとっては少しでも近くに置いておきたいという溺愛っぷりによって、席は教卓の前である。
何度席がえをしても、場所は違えど結局は一番前のどこかになってしまうので、チロは運が悪いと嘆いていた。が勿論それは黒崎の計算通り、というやつである。

「まあ特に言うことはなしだし、引き続きお前らは1限始まるまで今やってたことやっとけよー。じゃあ終わり」

待たせた割には簡潔な挨拶をすませると、そのまま黒崎は教室を出て行った。

「チロちゃんどーしたの?」
「うう…いっぱいセクハラされたよう……」

架月がぐったりとした千紘に話しかける。

「ひいちゃんも起こしに行ったらセクハラされるよぉ…。センセ寝起き悪いもん…」

いや、チロだけだから。
クラス全員の気持ちが一致した。

「誰にでもあんなことするのかなあ…センセ…」

その顔は、少ししょんぼりとしていた。
しかし朝も特に苦手ではないのにそういうフリをしているということは、それだけ千紘に本気だということで。
それに、黒崎はめったに人を自室に入れないことで有名だった。だから千紘は特例中の特例だということも、周知の事実。

なのに思い人にだけは届かないのは、皮肉なものである。

「まあ、チロちゃんだしね」
「?」

純粋すぎるのも、困りものである!



end

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