2


「センセー、朝だよ、起きてくださいっ」

委員長に無理矢理任命された時、朝が弱いからと教えてもらった部屋のパスワードを入力し中に入る。一度も起きてないのかカーテンも開けた様子もなく、部屋はぼんやりとした日の光に包まれていた。

ゆさゆさ、と布団の中に籠る姿をゆするが起きる様子がない。
チロはため息をついて、いざとなったらと言われた方法を試すことにした。

「よいしょ、」

掛け声とともに塊の上に乗る。
昔なかなか起きずに半泣きになっていた千紘に、黒崎が提案したこと。
それは、上に乗っかってくれれば重みで起きることができるという黒崎しか得をしない理不尽な要求だった。
ただ千紘にのっかられたいという不純な動機に、純粋で鈍感な千紘が気づくはずもなく、しょうがないと体重をかける。
最近はゆさぶるのが面倒なので、最初から遠慮せずに乗ることにしていた。

「センセー、起きてよーっ」

しかし今日は全然起きてくれない。いつもなら体重をかけてしばらくしたらすぐに目がぱちって開いてくれるのに。

「センセ…?」

心配になって布団を覗き込む。
その瞬間、ぬっと腕が伸びてきてそのまま千紘を布団の中に引きずり込むと、何も着ていない裸の胸元にぎゅう、と顔が押し付けられる。

「や、な、なに…っ!」

いきなりのことに軽くパニックになり半泣きになった千紘が、腕から出ようともがく。それにさらにぎゅっと力が強まったと思うと、ちゅう、とおでこに濡れた感触が伝わる。

「ん…っ!」
「――朝から積極的じゃねえか、チロ」

寝起きとは思えないほどハキハキと意地悪そうにチロを抱きしめながら笑う。

「な、何がぁっ!」
「裸の男の腕の中に潜り込んで来るなんて、ナニされてもおかしくねーぜ?」
「せ、センセが引きずり込んだんだもんっっ!!」

黒崎の恥ずかしい言い方に顔が真っ赤になる千紘。
それにくすりと笑みをこぼすと、くろやんはそのなめらかな頬に指を滑らした。

「も、センセ離してっ、起きてっ!!」

明らかに意識が覚醒しているのにもかかわらず、センセは寝ぼけていると勘違いをし、起こそうと必死になる千紘。
その勘違いのおかげか、黒崎は毎朝セクハラじみたことをしても、「寝ぼけてるから仕方ない!」という斜め横の解釈で受け止めてくれるので、好き勝手し放題だった。



[ 2/28 ]

 
top



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -