∵ 06

電話を切られたあとも、なにがなんだか信じられなかった。
卒論なんてやる気が起きない、ベッドに寝そべり今起こったことを整理する。

あれが本当の陽摘だとしたら。
陽摘はまったく俺に本性を見せることもなく過ごしていたということだ。
浮気をしてもまったく動じないのは、――――俺のことなんて、どうでもよかったから。
すべてが演技だった。泣いたフリをしていた、それはフリでもしなければ俺との付き合いに思い入れなんてないからだ。約1年間付き合っていたけれど、それも陽摘にとっては取るに足らない日数だったのだ。


陽摘は女みたいな男だから。違った。陽摘は男だった。
あいつもまた俺を性欲処理に使い、体よく扱っていた。陽摘の学園でそんなことをしたら、噂になるから。だから俺を使った。
霧埼高校は、外部からの人を一切遮断する、山の中にある全寮制の男子校だ。そんなところにいたら、男が男を性の対象に見ることはある意味当然だ。だから恋人の存在も必要だった。そうすれば手を出されることもなく、また出したところで陽摘によって外の世界にそいつのやったことが広まってしまう。それはなんとしても避けたいところだ。



そして陽摘が口走った、トウガという名前。
それは俺が初めて陽摘を見たときにも言っていた。


「国見統臥に近づくのはやめて。迷惑だから」

そう言われていた女子大生をあの日以来見た人はいない。そいつといつも一緒にいた女に聞いてみると、学校をやめたらしい。家もそこそこ裕福だったが、父親が左遷されたとかで大変だと。

女子大生は父親に命じられ、国見統臥に近づいた。すべてはお金のために、玉の輿に乗るために。あのときは気づかなかったが、国見は世界に通用する財閥だ。統臥は、そこの家の男なのか。
その女の父親は、何らかの圧力がかかってそうなった。それは国見家ではなく、もっと別の、国見よりは小さいけれどそれでも日本が誇るくらいの企業で。たしかそれは、エノモト――――。


―――榎本、陽摘という。俺の元恋人は。

全てが合点した。あの時陽摘がわざわざ大学まで単身で来たのは、国見統臥を邪魔する者を排除する、最終警告をするため。


だとしたらなぜ陽摘がそんなに統臥に執着する。
陽摘が執着するべきなのは、俺のはずだろう―――。

その考えに至った時、ぞわああと鳥肌が立った。
何を思った、今俺は。



「―――――くそ…統臥って誰だよ――」




ああ、最初から執着していたのは、俺だけだった。




おわり


お待たせしましたあああああああ
申し訳ございませんんんんん
尊が最低すぎて笑えないレベル。
「ヤンデレさえも手玉に取る陽摘」…難しかったです、申し訳ない!


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