∵ 02


戸惑う陽摘をまあまあと誤魔化しながら、行きつけのレストランに連れて行く。制服でも気軽に行ける程度のレベルの。それからまたまあまあと誤魔化しながらホテルに連れて行って、ヤることヤった。陽摘は戸惑っていたけれど、最後は可愛く喘いでくれたから良しとする。俺も男相手だったのに全然抵抗なく、むしろ陽摘がそこらへんの女よりも可愛かったから今までで一番よかったかもしれない。

「なあ、陽摘」
「…なに?」
「俺たち、付き合わね?」
「え゛。………えぇっ!でも僕たち、今日であったばっかだし…」
「そういうの関係なくね?」

俺は陽摘を手放したくなかった。こんな可愛くて体の相性も良くて話してて楽しい奴、なかなかいないと思ったから。

「ねえ、陽摘。俺のものになってよ」

懇願すれば、陽摘はころりと俺の手の中に堕ちた。今までの女にもやってきたことが男にも通用するんだと分かった瞬間だった。




陽摘は全寮制の高校に通っているから、めったに会うことはない。たまに会えても次の日は授業だとか用事があるとかでゆっくりデートをする暇もない。俺はイライラしていた。

「ねえ。尊くん、このあと暇ぁ?」

その日は陽摘と夕方会う約束をしていた。
今は昼休み。
この女の露出の高い服や作り物のように甘える声、すべてが俺を誘っているとわかっていた。
――なあ陽摘、お前が悪いんだよ。

「夕方までならな」



ホテルでシャワーは浴びたけど、いくらなんでも数時間前の浮気の痕跡は完璧に消せない。それも分かっていた。
一人暮らしをしている俺の自宅に呼んで陽摘とゆっくり過ごす。今日は泊まって行けると陽摘が可愛く笑うのに、俺も笑い返す。


「それでさー」
「えー!すごい尊!」


俺が言う言葉すべてにすごいと相槌を打つ陽摘。聞き上手だからか、陽摘といるとつい饒舌になる。

「酒飲むか?」
「僕みせいねーん」
「はは、そうか」

じゃあ俺だけ飲むか、と冷蔵庫から発泡酒を持ってこようと立ち上がる。

「……なるほど」

背後で陽摘が何かつぶやく声がして、後ろを振り返る。

「なんか言ったか?」
「ううん、なんにも!」



陽摘がベッドで寝ている間にシャツを拾い上げて気づいた。
俺の背中に小さく、キスマークがついていた。上着を羽織っていたからまったく気づかなかった。


「…女ってのは怖いねえ」






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